『クレヨンしんちゃん』最新ゲーム開発者「復興の手助けになれば」 発売日に思わぬ形で実現

松田 和城 松田 和城

 

 7月15日に熊本県で行われた「くまもとふっこう応援隊長」就任式で蒲島郁夫県知事が、とあるゲームをプレイしたことはご存知だろうか。プレイされたのは、同日に発売されたニンテンドースイッチ向けゲーム『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』。野原しんのすけ(しんちゃん)の母・みさえの故郷である熊本県阿蘇市をモデルにした自然豊かな“アッソー”で、しんちゃんと夏休みを過ごす体験アドベンチャーだ。『ぼくのなつやすみ(ぼくなつ)』シリーズを手がける綾部和氏がゲームデザイン、脚本を担当した。同氏はよろず~ニュースの取材に応じ、制作の経緯や苦労、想像を超える反響の大きさについて語った。

 熊本県では「くまもとふっこう応援隊長」に任命されたしんちゃんが、県知事やご当地キャラクター・くまモンとともにゲームをプレイする様子が報道されるなど、盛り上がりを見せている。綾部氏はまだ復興途中だった現地での取材を振り返り、「2019年の夏の時点で、鉄道が途中で止まったりとか完全には復旧が進んでいなかったんですよ。例えば熊本市から阿蘇市へと行くときも、山の中を通らなきゃいけないようなものすごい迂回をしなくてはいけなかったんです。そういった状況を見て、やっぱり熊本県内をいくつかの場所を取り上げて、将来、復興の手助けになればいいかなと勝手に思っていました」と明かした。

 「クレヨンしんちゃんと夏休みを組み合わせたゲームを開発しよう」と発案したのは、同作を発売したネオス社の長島朗プロデューサー。2018年後半ごろ、同氏から『ぼくなつ』シリーズを手がける“夏休みゲームのプロ”綾部氏に声がかかった。通常、ゲームの企画においてテーマ的に懸案事項が発生するのだという。しかし、今回はそういったハードルがなかった。「まず相性がすごくいいだろうなと。『ご飯とのり』みたいな直感的にわかりやすい組み合わせだったので、そういう意味ではこれは面白いことになるんじゃないかと思っていました」。

 制作は、今年2月に放送された「Nintendo Direct 2021.2.18」で初めて発表された。放送後、任天堂公式チャンネルでのトレーラー映像の視聴回数は、発表されたタイトルの中で『スプラトゥーン3』に次ぐ2番目の数字を記録。サードパティ(任天堂タイトル以外)での視聴回数では歴代1位を記録するほど、高い注目度を見せた。「100+100=200の足し算ではなくて、組み合わせの良さによるかけ算で反響が大きかったのではないかな」と分析。「これはただ事じゃないぞと。数字で出るのはわかりやすいので。プレッシャーがかかりました」と笑顔を交えながら振り返った。

 制作において苦労した点を問うと、「髪型です」ときっぱりと回答。もともと“2D”で描かれてきたキャラクターを“3D”で描きなおす点は、最初から見えていた技術的なハードルだった。「クレヨンしんちゃんの登場人物は、不思議な頭の形なんですよね。見る角度が変わると、形も変わるっていう。いかにして不自然じゃなく、つじつまが合っているものを作れるか大変でしたね」と説明した。納得のいく状態になるまで、2年間要したという。ちなみに一番大変だったキャラクターは、みさえだったという。

 3Dモデルのしんちゃんを動かせるのが魅力の一つ。しかし、しんちゃんを回転させ、正面の顔を見ようとすると、右から左の横顔へと急激に切り替わる瞬間がある。発売後、ネットを中心に、「絶対に正面の顔をみせない」と話題になった。アニメーションや漫画のキャラクターにおいて、何年かかけてできあがったノウハウの流れは、ゲームなどの他作品でも踏襲しなければならない。「もともとが不思議な立体をしている中で、なおかつ正面の顔がないっていうオファーでした。(正面の顔を見ようとすると)切り替わる部分において、カメラの位置から見て違和感のないものを作ることは、やはり試行錯誤が必要でしたね」と話した。

 発売から約2週間が経過し、ユーチューブでの同作の実況動画の数は1800本を超えている。制作者側も想像を超える反響だったようだ。動画投稿者からの問い合わせがあまりに多かったため、動画投稿のガイドラインを当初の予定より早く公開した。元SMAP・香取慎吾もプレイ動画をあげるなど、幅広い層から支持されている。綾部氏は、「最初のぼくなつ(『ぼくのなつやすみ』2000年)が出たときにお店に行ったら、全然売ってなくてすごいがっかりしたんです。後で売り切れだったって分かったんですけど。なので、今回こそは売ってるところを見たいなと思って、発売日の後に見に行ったんです。そしたらまた売り切れてて!自分の商品が並んでいるのをまだ見たことないんですよ」とうれしい悲鳴をあげた。

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