兵庫県尼崎市の、とある市場に「怪談売買所」があるらしい。
自身が体験した心霊現象、幽体離脱、虫の知らせなど不思議な体験を語れば、1話100円で買い取り、また100円支払えば店主が集めた怪談を聞くこともできるそうだ。中には不可解な体験を誰にも話せず悩み、打ち明けに来る人も。今回は、そんな不思議な店の主人であり、NPO法人「宇津呂怪談事務所」所長である怪談作家の宇津呂鹿太郎さんに話を聞いてみた。
――怪談に興味を持たれたきっかけは何だったんですか?
宇津呂:物心ついた時から怖い事や不思議なことに興味があったのですが、好奇心と知識を伸ばしてくれたのは母と祖母でした。怖い話の本は何でも買ってくれましたし、テレビで怪奇特番やホラー映画が放送される時には必ず教えてくれました。
――宇津呂さん自身も、怖い、奇妙な体験をしたことはあるんですか?
宇津呂:私はどちらかというと鈍感ですね。とはいえ、こういう仕事をしていると些細な怪異に見舞われることは多々あります。聞こえるはずのない声が聞こえたとか、近くで何かの気配がしたとか、触られたとか、置いたはずの物が移動していたとか。
――些細といえど十分怖いですが…霊感というか、感じやすい人というのは実際いるんですか?
宇津呂:「自分には霊感が無いから!」と言う方は多いのですが、真剣に思い出そうとするか、しないかの差だけだろうと思っています。しかし不思議な体験を多くされている方がいらっしゃるのは事実ですし、見えない物が見えるという方もおられます。何が原因かは分かりませんが”霊感”を持ち出せば説明しやすいのは確かです。
――宇津呂さんが体験された中で一番恐ろしかったことは何ですか?
宇津呂:それほど恐ろしい体験はないのですが…
昨年11月末、曰く付きの空き家でオールナイトの怪談会を開催した時の話です。直前にファンの方から「事故などが起きないようにお猪口に入れて部屋の四隅に置いてください」と、御神酒をいただきました。限定販売の非常に高価な清酒でした。
しかしイベント準備に追われ、開栓することなく荷物置き場の鞄の中に入れっぱなしにしてしまったんです。仕方なく自宅に持ち帰り開封して飲むと苦味と渋みが強く、とても飲めたものではありませんでした。とにかくまずかった。
自分のミスで味が変わってしまったと思いましたが、それにしても11月末の電気も通っていない無人の部屋。開栓もしていないのに味が変わるとは考え難く、このお酒は元からこんな味なのだと冷蔵庫に片付けました。
この御神酒をくれた方に聞いてみると、神社に奉納するために年に一度、特別に作られるものだったのです。
――ヒッ…!!ジワジワくる怖さがありますね…御神酒としての役割をしっかり果たしていたということかもしれませんね。さて、これからの活動のご予定は?
宇津呂:これまで通り、怪談売買所などを通じて怪異な体験を集め、ライブや怪談会、ポッドキャストなどから世の中に発信していきます。更に新たな語り部の発掘を行い、怪談文化の復興と、誰もが怪談を気軽に楽しめる土壌を構築していきます。
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夏といえば、海、夏祭り、ビアガーデン。しかしコロナ禍の今年は部屋で過ごす時間も多いのでは。1人で部屋で楽しめる夏、といえば「怪談」。寝苦しい夜のお供に、部屋を暗くして、宇津呂さんが集めた”本当にあった怖い話”で涼んでみては。
100円で買い取った怪談話
Spotify:https://open.spotify.com/show/3fbG6eXxGBefADnBzWz4XI
NPO法人「宇津呂怪談事務所」:http://kwaiutsuro.org/about