等身大ヒーローが「悪」と闘う特撮ドラマのメインストリームとなった「仮面ライダー」の放送開始から今年で50年の節目を迎えた。同シリーズだけでなく、さまざまな作品で膨大な回数が製作されてきたが、その中には「今思えばあれは何だったの?」とツッコミどころ満載の回もある。特撮マニアでも知られるタレント・なべやかんは当サイトの取材に対し、1974年に放送された3本を実例としてピックアップした。(文中敬称略)
まずは、仮面ライダーと同じく、石ノ森章太郎原作となるNETテレビ(現・テレビ朝日)系「キカイダー01(ゼロワン)」。同作は「人造人間キカイダー」の続編として73年5月から74年3月まで放送されたが、なべはそのうちの2本を紹介した。
74年1月19日放送の第36話「四次元の怪 恐怖のタイム旅行」では、悪の組織「シャドウ」がタイムトンネルを使って、江戸時代の学者・平賀源内を誘拐し、その知能を利用しようと画策する。
平賀源内が長崎で手に入れた静電気発生機「エレキテル」を修理、復元するのが1776年。放送当時から約200年前へのタイムスリップとなるが、高度な科学技術を盗むなら未来に行った方がいいのではと思うものの、そこはそれ、江戸時代を舞台にする発想の面白さ、そして、この人物への興味がお茶の間でも高かったことも背景にあったのかと推測される。ちなみに、71~72年にNHKでは平賀源内が主人公のドラマ「天下御免」が放送されている。
なべは「タイムマシンを作って、江戸時代から平賀源内を連れてきて、キカイダー01を倒すような科学力を手に入れようとする回ですけど、エレキテルよりタイムマシンの方がすごいじゃないか! って(笑)。マジメにそういうことをやっているのが面白いですね」と評する。
続いて、なべは「キカイダー01には『果物買い占め作戦』というものが出てくる回もあります」と指摘。74年3月16日に放送された第44話「ビジンダーの美しく悲しき別れ」だ。
悪の組織が日本中のみかんを強奪し、子どもたちがみかんを奪い合うことで社会に混乱を生じさせ、世界征服につなげるという壮大(?)な計画だった。なお、このタイトルに登場するビジンダーが人間の姿をしている時の「マリ」役は志穂美悦子(当時18歳)が演じていた。
なべは「悪の組織が青果店のトラックを襲って果物を全部奪っちゃうんですよ。それで、みかんとかを食べられなくなった子どもたちがいがみ合って、グレる…という計画です。実際、当時、それを見ていた子どもたちが20歳になった頃の成人式ってものすごく荒れてるんですよ。だから、もしかしたら、シャドウの作戦が成功したのかもしれないですね(笑)」と、10年先を見据えていたのかもしれない(?)長期的な試みを評価した。
さらに、なべは「放送当時、日本はオイルショックの時期だったので、悪の組織が『ロボットや戦闘員を作れなくなったらどうしよう』と悩んでいるシーンとかもあって面白いです」と付け加えた。
また、なべは「鉄人タイガーセブン」(フジテレビ系で73年10月~74年3月放送)という作品で、74年3月9日放送の第23話「悪魔の唸り コールタール原人」を挙げた。
同作では、元オートレーサーだった主人公が、走行するバイクから「タイガー・スパーク!」のかけ声とともに飛び上がって変身するのだが、乗り捨てられたバイクはその後どうなるのか、同作以外にもこの変身パターンはあり、子ども心に気になった人も少なくないだろう。大概は何事もなく、ヒーローが人間の姿に戻った時は普通に乗られているが、そうはいかなかったのがこの回だ。
なべは「タイガーセブンでもヒーローが仮面ライダーみたいにバイクに乗って変身するんですが、その後、バイクがどうなっているのか疑問じゃないですか。タイガーセブンではその答えがあって、『トー!』って飛び上がって変身した後で、無人のバイクが暴走して子どもをはねるんですよ。それで、子どもが入院した病院にお見舞いに行くという話です。献身的に病院に通い、タイガーセブンの人形をプレゼントしたりして示談に持ち込むという。そこが面白いですね」と振り返る。
この回で、主人公は罪の意識にさいなまれる。人造人間だが、そんな人間的な葛藤も描かれる。「トンデモ」や「トホホ」的な要素で笑い飛ばすこともできるが、こうした「マジメ」な部分にも、視聴者の心を打つ要素があったのかもしれない。