昨年はコロナ禍で声優の新人デビューが難しくなった際、自身が教える生徒たちが諦めがちになっているのを見て「私の年齢でも頑張れるところを見せたいと思いました」と、気合が入った。子育てが一段落つき、講師を週4日務めても時間的な余裕が出てきた。昨年の「スーパーカブ」担任教師役決定後、自身のツイッターを本格始動させた。「たくさんの会ったことのない人たちから応援されて勇気が出てきました」と、一層気持ちが高ぶった。
今年1月に人気作品「スラムダンク」の映画化が報じられた際は「彩子役の原えりこは引退している、とネットニュースに載り、すごく悔しくて、悲しくもなりました。でも、そう書かれてしまうのは、仕事をしていない自分が悪い。もっと仕事をしないと」と火が付いた。
フリーから立場を変え、貪欲に仕事を求める。「やっぱり演じたい、表現したいと、改めて気付きました。どんな役でも全力で頑張ります!」と力強い。共演した「きまぐれオレンジ☆ロード」で仲が良かった鶴ひろみさん、本多知恵子さんは既に世を去った。「先のことは誰にも分からない。だからこそ今を頑張らなきゃ。最後は役者として幸せになりたい。昔のようにメインキャストを演っていなくても、自分は声優だと、今は胸を張って言えます」。還暦を過ぎた再出発に、迷いはない。
故・市原悦子さんに恩返しを
原えりこの芸名は、2019年に死去した女優・市原悦子さんから1字を授かった。二十歳の時、市原さんの夫である塩見哲氏が立ち上げた番衆プロのニューフェイスに合格。女優としてはドラマのレギュラー出演に届かない中、市原さんが「まんが日本昔ばなし」に出演していた縁でアニメオーディションに参加し、声優デビューを果たした。一気に出演本数が増えたことで「声優でチャレンジしたいと決意しました。でも市原さんには猛反対され、結局不義理をしてしまいました。本当は存命中に〝声優で成功しました〟と報告したかったです」と悔いが残る。そんな心のキズも、今は糧にする覚悟でいる。