「ゆるキャン△」何でもない風景が描き出す、現代の絶妙な距離感

宮 昌太朗 宮 昌太朗
「ゆるキャン△」12巻(C)あfろ/芳文社
「ゆるキャン△」12巻(C)あfろ/芳文社

 2000年代中盤あたりから、思春期の少年少女の日々をコミカルに描いたアニメ作品が、いくつも登場するようになった。俗に「日常系」とも「空気系」と呼ばれたりもするこうした作品群の中に、このたび第2期が無事、最終回を迎えた『ゆるキャン△』もまた位置しつつ、ユニークな達成を見せてくれる。

 日常系の作品では部活動がモチーフとして扱われることが多いが、『ゆるキャン△』の場合はそれが「キャンプ」になる。ひょんなきっかけで、ソロキャンプを楽しむ高校生・志摩リンと知り合う各務原なでしこ。彼女が転校先の高校で出会った「野外活動サークル」の大垣千明と犬山あおい、さらにはリンの友人・斉藤恵那を巻き込みながら、あちこちにキャンプに出掛ける。そんなストーリーだ。

 画面を見ていて気づかされるのは、キャラクターが映っていない時間が思いのほか、長いことだ。キャンプがモチーフなだけに、出掛けた先の美しい風景(リアリティーと絵としての魅力を両立させた背景美術は本当に素晴らしい)をたっぷり見せるカットも多い。とはいえ決してそれだけではなく、たとえキャラクター同士の会話の場面であっても、周囲を取り巻く小物や背景にカメラを向け、なんでもない景色を丁寧に拾っていく。ゆえに私たちは、なでしこたちと一緒の時間を、丸ごと体験しているような気分になる。

 そしてそんなゆったりとした時間の中で、積み重ねられる人間関係もまた『ゆるキャン△』の面白さだろう。読書が好きで表面的には無表情なリンと、物おじせず、明るく活発で大食漢のなでしこ。まったく正反対に見えるふたりが一緒に時間を過ごすうちに、少しずつ互いに影響を与え始める。第2期では、リンに触発されてソロキャンプに初挑戦するなでしこの姿が描かれ、かたやリンは意外と心配性な性格が見えてくる。変化はあくまでも、少しずつ訪れるものなのだ。

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