大学受験に向けた模擬試験を控え、目の前の問題が解けずにため息をついている人もいるだろう。数学の応用問題に丸1時間も悩み続け、結局正解にたどり着けないままタイムアップしてしまうと「自分はなんて頭が悪いんだ」と自己嫌悪に陥り、次第に勉強すること自体が億劫になってしまうかもしれない。
1つの問題に時間をかけて解く人がいる一方で、大阪大学大学院を修了し受験戦争を勝ち抜いてきた中田剛士さんは、別の勉強スタイルを貫いていたという。中田さんは「悩む時間は1分でいい。わからなければ即、答えを読んで理解すればいいんですよ」と話す。
真面目な受験生ほど「自力で解くこと」に固執し、貴重な時間を溶かしてしまう。しかし中田さんは、それこそが挫折の引き金だと指摘する。合格を掴み取るための学習法について、中田さんに詳しく聞いた。
中田さん自身も、最初は1つの問題に何時間も向き合うのが正しいと思い込んでいたそうだ(以下『』内、中田さん談)。
『数学の難問を前にノートに向かい、気づけば1時間が経過していました。結局解けずに焦って次の教科に移っても、頭はモヤモヤして集中できない。解けない問題に執着して時間を浪費する行為は、自信を失うだけで、私にとっては非効率すぎたんです』
この失敗から、中田さんは「問題集は実力を試すものではなく、解法を手に入れるインプットの場だ」という発想に至る。
『解法が頭にない段階でどれだけ悩んでも、何も生み出せません。それはレシピなしで料理を作ろうとするようなものです。1時間迷走して自己嫌悪に陥るくらいなら、1分で諦めて解法を見た方が効率的です。解法パターンを蓄積していく方が、早く合格ラインに到達できます』
もちろん、ただ答えを見るだけでは「わかったつもり」で終わってしまう。これを防ぐため、中田さんは解説を読んだ後に、あるルールを課していた。
『答えを見たらその直後に解説を隠し、白紙のノートに自分の手で解答を再現していました。再現できなければもう一度読み直し、数日後に解き直す。ここまでやって初めて、その解法は自分のものになります』
もちろん、どんな科目でも良いわけではない。中田さん流の「答えをすぐ見る勉強法」が活きる科目には、明確な特徴があるという。
『解法パターンや公式などの『明確な正解や型』が存在する科目は、この方法がおすすめです。数学や物理、化学でしたが、英文法や古文の句法などでも良いと思います。一方で、その場で文脈を読み解き、自分の頭で論理を組み立てる必要がある現代文の長文読解や小論文、自由英作文などには向いていません』
受験勉強において何が一番大切なのか。中田さんの答えはシンプルだ。
『真面目な人ほど、解けない自分を責めてしまいます。でも、一番大切なのはモチベーションを維持して机に向かい続けること。1時間悩んで撃沈するより、1分で答えを見て『なるほど、1つ賢くなったぞ!』と快感を得る方が、継続しやすいのではないでしょうか。プライドを捨てて効率的に学習ハックした人が、最後に勝つんだと思います』
すぐに答えを見るという学習方法。それもまた、中田さんが合格という結果を掴み取るために編み出した、自分を気持ちよく勉強させる、緻密なセルフマネジメント術だったのだろう。
◆中田 剛士(なかた・たけし) 大阪大学大学院工学研究科修了後、機械メーカーに就職。その後、IT企業に転職後独立・起業。現在は、大阪府内でコミュニケーションに関わる会社を運営している。