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血圧が乱れやすい季節の変わり目 残暑の気温差と食欲の秋に潜むリスクにご用心

悠々〜ライフ

田中 靖 田中 靖
画像はイメージ(buritora/stock.adobe.com)
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 秋は健康診断のシーズン。「血圧がやや高め」と言われて戸惑う人も少なくないのではないだろうか。大切なのは一度の数字に振り回されず、自分の生活や体調と照らし合わせて考えることだ。

 厳しい残暑から秋へと移るこの時期は、血圧や体調に変化が出やすい時期でもある。東京・渋谷区のそのだ内科糖尿病・甲状腺クリニックの工藤孝文副院長(42)によると「残暑から気温が下がると血管が収縮して血圧が上がりやすくなります。温度差で自律神経が乱れ、めまいや倦怠感、睡眠障害が出ることもあります」という。

 特にシニア世代は血圧の変動に注意が必要で、「血圧は一定ではなく日内変動や経年変化、さらに季節による変動があります。冬に高く、夏に低くなる傾向があり、その差は若年者で3~4mmHg(ミリメートル・マーキュリー=水銀柱ミリメートル)、後期高齢者では10mmHg、中には20~30mmHgとなる場合もあります。急激な温度変化は血圧を乱高下させ、体に大きな負担となります」と警鐘を鳴らす。

 また、秋は「食欲の秋」でもある。旬の味覚を楽しむ一方で、塩分の摂り過ぎに注意が必要だ。世界保健機関(WHO)は1日5g未満を推奨、日本高血圧学会も6g未満を目標としている。しかし日本人の平均摂取量はまだ高く、日常的に減塩を意識することが大切と言われる。工藤医師は「うま味や酸味、香辛料を活かして風味を出す、調味料は計量する、味見をしてから塩を足す、加工食品や外食を控えるなどの工夫が効果的です。レモン果汁を30ml程度継続摂取することで血圧上昇リスクの軽減が認められています。塩味を感じやすくしてくれるので、日々の食事に取り入れるとよいでしょう」と話す。さらに、ブロッコリースプラウトに含まれる「スルフォラファン」やサバ缶の「EPA・DPA」など、血管を守る栄養素を積極的に取り入れることもすすめる。

 健診で血圧が高めと指摘された場合、まずは放置せず医師に相談することが大切だ。生活習慣や服薬の必要性を評価してもらい、その上で、「減塩の食事、週150分程度のウオーキングなど中等度の運動、体重管理、節酒・禁煙、十分な睡眠、ストレス対策、定期的な検診と薬の適正管理」が基本となる。高齢者は転倒予防の筋力維持や室温管理も重要で、「外気との温度差を10度以内にすること」を目安に冷暖房を調整すると血圧の安定につながるという。

 血圧異常は自覚症状のない“沈黙の異常”と呼ばれる。だからこそ、健診の数字は未来の健康を守るための警告灯だ。厳しい残暑から秋へと移るこの季節は、気候の変動と食欲の増進が血圧に大きく影響する時期でもある。血圧変動のリスクを理解し、食生活や生活習慣を見直すことが、長く健やかに過ごすための第一歩となる。

 ◆工藤孝文(くどう・たかふみ) 1983年1月18日生まれ、福岡県出身。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。糖尿病内科医・東洋医学医。福岡県みやま市にて工藤内科の院長を務めながら地域医療に尽力し、現在は東京を中心に全国各地で糖尿病・ダイエットに関する講演活動を展開している。専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。NHK「あさイチ」「チコちゃんに叱られる!」「あしたが変わるトリセツショー」などテレビ番組多数出演。医学的根拠に基づいた健康情報を伝えている。

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