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なぜ塾なし中学受験なのか 「家の時間を大事に」「“塾ありき"への違和感」選んだ3つの理由

受験

野田 茜 野田 茜

 中学受験といえば、学校で習う内容と入試問題の乖離(かいり)が大きいため、塾に通うのが常識だと考える人も多いだろう。そんな中、筆者の家では長男(現在高校1年生)が塾なしで中学受験に挑み、第1志望の中高一貫校に進学した。決して塾を否定しているわけではなく、あくまで家庭の事情や子どもの性格を踏まえてこの方法を選んだだけだが、「どうして塾に行かなかったの?」と聞かれることも多いため、その経緯を振り返ってみたい。

 まず大きかったのは、家で過ごす時間を大切にしたかったこと。長男が小3の冬に中学受験を意識し始めた頃、長女は小2で、年の近いきょうだいは放課後にそろって家で遊ぶのが日課だった。あと数年すれば、中学生になって一緒に過ごす時間は激減するだろうと考え、塾に通わせるよりもきょうだいで遊ぶ時間や家族そろって食卓を囲む時間を優先した。

 また、“何もしない自由な時間”も大切にしたいと感じていた。ボーっとしたり、気の向くままに読書をしたり庭で虫を探したりと、目的のない過ごし方が子どもの成長に欠かせないと考えていたからだ。特にマイペースな長男にとって、通塾に合わせた生活は大きなストレスになるのではないかという不安があった。

 次に、中学受験が塾ありきで進んでいくことへの違和感があった。多くの家庭が「どの塾に通うか」から話を始めるが、集団授業では個々の理解度やペースに合わせきれず、結局は家庭で補う必要が出てくる。ならば最初から家庭学習で子どもに合わせて進めるほうが、長男には合っているのではないかと思うようになった。

 また、塾に通えば「授業についていけているか」「友達関係は大丈夫か」「講師は子どもを見てくれているか」など、通塾特有の悩みも生じる。テストや模試の順位に一喜一憂しすぎて、本来の目標や子ども自身を見失う危険も感じていた。

 さらに、私自身に時間の余裕があったことも一因だった。当時、私は整理収納アドバイザーとして個人宅を訪問する仕事をしていた。依頼を受ける時期を調整できる柔軟な働き方だったため、長男の勉強を見る時間の余裕があった。もしフルタイムの共働きだったら、この選択は難しかったかもしれない。

 そして最後に、何よりも大きかったのは長男自身の希望だ。中学受験の勉強を始めるにあたって、その方法を夫と私で話し合い、長男に説明した。塾に通うのが王道であること、一方で通信教材やテキストで自習する方法もあること、自学の場合は私も夫もプロではないので適切に進められる保証がなく、場合によっては「やっぱり通塾しておけばよかった」と後悔するかもしれないこと。こうした点をすべて伝えたうえで、どうしたいかを本人に聞いた。長男の答えは「塾に行かないで家で勉強する」というものだった。その言葉を受けて、塾なしでの中学受験がスタートした。

 塾に通わない選択は決して楽ではない。教材選びからスケジュール管理まで、親子で試行錯誤の連続だ。ただその分、子ども自身のペースで進められ、親子で工夫する楽しさもあった。塾なし中学受験はまだ少数派かもしれないが、家庭や子どもの状況によっては1つの方法になりうると感じている。

<プロフィール>

野田 茜

 2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。

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