日本の高齢化社会において「空き家」が社会問題となっている。高齢者の死亡、入院や施設に入ることなどで長年住んだ家を出ることや、少子化に伴う人口減少や都市部への人口集中などによって空き家が増加している。生活者の視点から、消費経済アナリストの渡辺広明氏に話を聞いた。
この「空き家問題」に関して、渡辺氏は「親世代の高齢化により、実家に一人暮らしだった母親、もしくは父親が入院したり、介護施設に入った等で空き家になる。地方もそうですが、都市部でも空き家が増えていて、例えば、東京なら世田谷区が多いと言われています。相続する側、される側の問題、相続や終活にも絡んでくるので、高齢者にとっても非常に大事な問題です」と解説した。
総務省が昨年9月に公表した「2023年 住宅・土地統計調査の確定値」によると、全国の空き家の数は過去最多の約900万2000戸で、住宅総数に占める割合は13.8%。賃貸用や別荘などを除いた使用目的がない空き家に限って見ると、約385万6000戸あり、全体の5.9%を占めた。使用目的のない空き家は約5年前の前回調査から37万戸近く増えていた。
このデータを受けて、渡辺氏は「空き家が約900万戸というのは約30年前の2倍です。住宅のうちに占める13・8%という数字は全体の7分の1に当たり、そのうちの4分の1が放置されています」と説明。その上で、同氏は「ビジネス面から考えると、そこに参入して、いろいろな空き家を使った住宅の支援など、いろいろな動きがこれから出てくるのではないか」と推測した。
さらに、国土交通省の調査によると、空き家の取得経緯は「相続」が約55%。また、空き家の所在地と所有者の居住地の関係については約3割の人が「車や電車等で1時間超」という「遠隔地」に住んでいた。
遠隔地に住むことなどによって、住人が長期間にわたって不在で、適切に管理されていないと「倒壊の危険」などの諸問題が発生する。行政は空き家対策に乗り出し、23年12月には「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部を改正する法律が施行された。国交省によると、「空き家の持ち主について市区町村に固定資産税の納税記録を照会し特定して立ち入り調査権限をすることを認め、倒壊の恐れ等がある『特定空き家』については撤去や修繕を命じ、行政代執行を可能にする」という法律となる。
この「特定空き家」だが、簡単に「壊せば済む」という問題ではなくなっている。
渡辺氏は「空き家が不要だからといっても、その家を壊すのにお金がかかる。また、空き家の数が多くなると、(家が)売れなくて負債になる可能性も出てくる。これから価値が落ちていくと見込まれるので、将来、年金が出ないといった不安がある中、家の処分を早めにできることで、よりよい未来につなげていける。そのためにも、自宅が空き家になりそうな人は考える時期にきています」と指摘した。
さらに、同氏は「家の中にモノたくさんある場合、その処分も大変になる。やはり、なるべくモノを持たず、モノにこだわらない時代が空き家問題に絡んで出てくると思います。遺産相続とか固定資産税の問題などもあって専門家に相談した方がいいですけど、少なくともできることは自分の荷物を整理しておくこと。そこがまず、シニアの方が次の世代に向けてできることだと思います」と付け加えた。
今後に向け、渡辺氏は「国が法整備に動くと思いますが、それを待っているだけでは改善されないので,手をこまねくのではなく、自宅が空き家になりそうな人は考える時期にきています。子どもたちが家を出て、高齢者が広い家に1人で住むようになった場合、ワンルームマンションか、介護付き老人ホームに入るのか…といった道筋を自分自身で考えていく時代じゃないかと感じています」と指摘した。
さらに、同氏は消費者としての観点から「ポジティブなライフプランを組むこと。空き家問題はこれからの日本の個人消費にも大きく絡んでくると思います」と提言した。