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善意の仮面を被る夫たち「無自覚なモラハラ」という名の精神的支配…なぜ気付かないのか!? 専門家が解説

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周囲からは「理想の旦那さん」と評される男性Aさんは、外面が良く社会的にも信頼が厚い。しかしひとたび家の扉を閉めると、表情は冷徹な指導者に変わり、妻のやることなすこと全てに細かく口を出していた。「君は本当に要領が悪いな。僕が教えてあげるよ」と、善意を装いながらその能力と人格を静かに否定し続ける。

これは、「無自覚なモラルハラスメント(以下、モラハラ)」の1つの典型だ。加害者である夫には悪気がなく、むしろ「妻のためを思って正してやっている」と固く信じ込んでいる。だからこそ、被害者である妻は「私が考えすぎなのだろうか」と自らを責め、出口のない迷宮に迷い込むのだ。ではこの「無自覚なモラハラ」にどのように向き合えばいいのか、夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞いた。

ー無自覚なモラハラに見られる特徴的な言動はありますか

無自覚なモラハラは、暴力的な言葉やあからさまな罵倒といった形はとりません。むしろ、より巧妙で、愛情や心配といった衣をまとって行われる場合が多いです。

代表的なのが、「君のためを思って」「僕が教えてあげるよ」といった言動です。これは対等なパートナーシップではなく、「能力の高い自分が、劣った相手を指導する」という上下関係が背景にあると考えます。

また、自分の意に沿わないことがあると、妻の存在をないもののように扱い、会話を一切拒絶するパターンもあります。理由を尋ねても「自分で考えろ」と突き放し、妻に過剰な罪悪感と自己反省を強制します。

ーなぜモラハラだと気が付かないのでしょうか

加害者が自身の言動をモラハラだと認識できない背景には、心に深く根差した歪んだ自己正当化の心理があると思われます。「正しさは一つしかなく、自分が持っている」と固く信じ込んでおり、人の数だけ多様な正しさがあるという発想自体が存在しません。

この信念に基づき、「間違っている妻を、正しい自分が導いてやる」という行為に及びます。それは彼らにとって悪事ではなく、むしろ善行だと信じています。したがって、妻が傷ついていると訴えても、「未熟だから俺の言うことの真意が理解できないのだ」と、反論し、決して自らを省みることはありません。

ーなぜ結婚前に気づかないのでしょうか

恋愛期間中、これらのモラハラ的特性は、しばしばポジティブな魅力として誤認されるからだと考えます。「強引なところ」は「頼りがいがある」に、「細かく指摘してくること」は「私のことを真剣に考えてくれている」に、恋というフィルターを通して変換されてしまいます。

ー別居や離婚を具体的に考えるべき「危険なサイン」はありますか

「このままでは自分が壊れてしまう」と感じたら、別居や離婚を考えたほうがいいでしょう。食欲がなくなる、眠れなくなる、動悸がする、常に緊張して体がこわばる、といった身体的な症状は、心が限界を超えている証拠に他なりません。

夫が帰ってくる時間になると胃が痛む、夫の機嫌を損ねないことだけを考えて一日を過ごしている、自分の意見や感情を口にすることができなくなった。もし、一つでも当てはまるのであれば、それはもはや健全な夫婦関係ではありません。

あなたの人生と尊厳を守るために、物理的な距離を取ることを真剣に考えるべき段階なのです。必要に応じて専門家に相談するなどして、早めに対策をとりましょう。

◆木下雅子(きのした・まさこ)行政書士、心理カウンセラー。

大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。

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