認知症に関しては、われわれ医師の間でも正確な知識を持っているものが少なく、一般の人においては、ほとんどの人が認知症に関して知らないと思います。私も専門外なので、今回は認知症の専門家である浦上克哉先生が執筆された本を参考にして、認知症に関して記載させていただきます。
認知症は、65歳以上になると10人に1人の割合で罹患(りかん)すると言われています。結構な割合で罹患する病気なのです。
誰しも中高年になれば、結構な割合で物忘れが出てきます。顔は思い出せるが名前が出てこない、昨晩食べたご飯の内容を思い出せない、親戚の子供さんの名前がすぐにでないなど心当たりはあると思います。
ところが、認知症は食事をしたことさえ忘れてしまう、今までできていたことができなくなった、財布をなくしたのに他人に盗られたと信じ込むなど、日常生活に支障を来す場合に認知症ということになります。正確には、専門家の診断が必要です。
日本人に多いのは、アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性、前頭側頭型の4種です。しかしながら、治る認知症があることはあまり知られていません。正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、アルコール依存症などです。これらが原因となっている認知症は適切に治療をすれば速やかに改善します。
しかしながら、その他の認知症に罹患したからと言って嘆き悲しむことはありません。家族、周囲の人たちの対応一つで、良くも悪くもなるのが認知症なのです。
一番悪いことは、失敗を責めたり、怒ったりすることです。これらを過剰にすると、徘徊(はいかい)、介護への抵抗、不潔行為、暴力行為などの周辺症状が悪化します。介護する側は本当に大変だと思いますが、認知症の人も同じ人間です。プライドを傷つけないように、優しく、丁寧に接し、失敗を責めたり、間違った事を言ったり、見えないものが見えていると言っても、即座に否定をしないことが大切です。
認知症には、さまざまな薬がありますが、家族、周囲の人たちの協力で薬以外にも効果がある治療法が分かっています。自尊心の向上のために古い記憶をたどる話をしたり、音楽を聴いたり奏でたり、動物と触れ合ったり、化粧をしたりなどです。男女比でいうと女性の方が認知症になり易いと言われていますので、化粧療法という治療法も生まれたのでしょう。
認知症は防ぐことができないと思われがちなのですが、さまざまな予防策があります。機会がありましたら、ご紹介させていただきます。