満員のバスや電車などの公共交通機関で、母親に抱かれた赤ちゃんが泣き出したことに怒りや不快な感情を示す乗客もいる。その場に居合わせた時、黙ってスルーするか、トラブルを事前に回避するために何らかの行動を起こすべきか…。こうしたケースの対応策について、「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏が見解を示した。
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【今回のピンチ】
通勤で乗った満員のバス。座っている母親に抱かれた赤ちゃんがぐずり始めたところ、後ろの席のおじさんが舌打ち。すぐ横に立っている自分は、居たたまれない気持ちに……。
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母親は一生懸命に「よしよし」と赤ちゃんをあやしています。しかし、赤ちゃんはなかなか泣き止んでくれません。そんな状況で舌打ちされて、どんなに焦っていることか。
舌打ちをしたおじさんは、その後も露骨に苦々しい顔をしています。このままだと二度目の舌打ちや咳払い、あるいは「おい、どうにかしろ!」といった暴言など、さらなる狼藉を働くかもしれません。
横に立っている自分としても、当事者の母親とは比べものにならないにせよ、居たたまれない気持ちでいっぱいです。さて、どうすればいいのか……。
何もしないで黙って立っているという選択肢もあるにはあります。しかし、ここで何もできなかったら、あとで自分を責めたり自己嫌悪に苛まれたりするに違いありません。
困っている母親を無神経かつ理不尽に追い詰めるおじさんには、激しい怒りを覚えます。かといって「おい、おっさん、なに舌打ちしてんだ!」と注意したら、高い確率で厄介なトラブルに発展するでしょう。そうなったら母親にも周囲の乗客にも大迷惑です。
おじさんが「弱そうな相手にだけ強気に出るタイプ」で、目を伏せて「い、いやその、すみません」と謝ってきたとしても、母親が救われるわけではありません。むしろ余計につらい思いをさせることになります。
とにかく今は、母親の気持ちを少しでも楽にしてあげることが大切。身勝手なイライラを炸裂させている幼稚なおじさんは、ひとまず放置しておきましょう。
まずは母親にニッコリ笑いかけつつ「大丈夫ですよ」と声をかけます。ここで、ねぎらうつもりで「たいへんですね」と言うと、むしろ恐縮させてしまうでしょう。「元気なお子さんですね」も皮肉に聞こえかねません。
さらに、笑顔のまま「子どもは泣くのが仕事ですから、みなさんぜんぜん気にしてませんよ」と続けます。こう言ったあとで、おじさん向かって微笑むのも一興。バツが悪そうに眼をそらしたら、こっちの勝ちです。
おじさんに「あれ、気になりますか?」と確認するのも楽しそうですが、わざわざケンカを売る必要はありません。大切なのは溜飲を下げることではなく、母親を安心させつつ車内の平和を保つことです。
周囲は味方だと母親に認識してもらったあとも、たぶん赤ちゃんはぐずり続けているでしょう。次は赤ちゃんに向かって、せいいっぱいの“変顔”を作りながら「ベロベロバア」を試みます。泣き止んでくれたら万々歳ですが、泣き止まなかったとしても母親の気持ちを楽にする効果はありそうです。
母親を救おうと一歩を踏み出せたことや、見知らぬ赤ちゃんのために変顔を作れたことは、大きな自信につながるはず。もしかしたら、母親は途中から「も、もうやめて」と思うかもしれませんが、赤ちゃんは喜んでくれていると信じて全力でやり続けましょう。