半年前に夫と離婚したAさんは、小学生の子どもを1人で育てている。そして子どもは月2回、元夫と2人きりで面会交流の時間を過ごす。
ある日、元夫と公園で遊んでいた子どもが遊具から落ち、病院で縫うほどの大怪我をして帰ってきた。Aさんが事情を聴くと、元夫は「スマホを見ていたら、子どもがいつの間にか怪我していた」と悪びれる様子もなく答えた。
元夫が我が子から目を離し、注意を払っていなかったという事実にAさんは「運が悪ければもっと深刻な事故になっていたかもしれない」と内心ゾッとするような恐怖を感じた。「もう元夫には任せられない…」と思ったAさんは、面会交流を今後も続けるべきか頭を抱えている。
このように元配偶者の不注意で子どもが怪我をした場合、今後の面会交流の条件は見直せるのだろうか。P&M法律事務所の林本悠希弁護士に話を聞いた。
子どもの利益が守られるかを基準に面会交流の条件を検討する
ー実際に子どもが怪我をした場合、それが「監督不行き届き(注意義務違反)」と評価されるのはどんなケースでしょうか?
子どもを預かる以上、親は面会交流中に我が子に迫る危険を予測し、回避する注意義務があります。そのため、公園の遊具など転落の危険がある場所では、常に子どもの様子を見守る必要があります。スマホ操作など面会交流中に必要のない行動によって子どもから目を離していれば、注意義務違反と評価されやすいでしょう。
一方、瞬間的で避けようのない事故なら、直ちに注意義務違反とはいえません。また、日常生活で誰にでも起こりうる程度の怪我までは、責任を問われないのが一般的です。つまり「避けられなかった事故」と「注意義務違反にあたる怪我」の分かれ目は、危険を予見でき、防ぐ手立てがあったかという点といえます。
ー注意義務違反があった場合、面会交流の条件を見直すことは法的にどこまで可能ですか?
面会交流の条件は、1度決めた後でも事情が変われば見直し可能です。今回のような怪我は、子どもの安全に関わる重大な事情変更にあたります。
話し合いで合意できれば、書面を交わすだけで条件を変えられます。しかし、当人だけでは合意に至らない場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てる流れになるのが一般的です。それでも調停がまとまらなければ審判に移り、裁判官が新たな条件を決定します。
条件変更の内容としては、面会の頻度を減らす、場所を限定する、第三者の立ち会いを求めるなどが考えられます。最終的な判断基準は、常に子どもの利益が守られるかどうかです。
ー面会交流中の事故が繰り返された場合、もともと共同親権を選んでいても、単独親権に切り替えられますか?
離婚する際に共同親権を選んでいても、事情が変われば単独親権への変更を申し立てられます。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所での調停、続いて審判に進みます。単独親権への変更が認められる主な理由は、共同親権のままでは子どもの心身に悪影響が及ぶおそれがあるためです。
また事故が一度きりか、繰り返し起きているパターンかは、単独親権への切り替えにあたって重要な判断材料になります。ただし、今回のような不注意が直ちに切り替えを認める決め手になるとは限りません。面会交流の見直しなど、他の手段と併せて検討するのが現実的です。
◆林本悠希(はやしもと・ゆうき) 弁護士
大阪弁護士会所属。離婚や男女問題、交通事故、相続、企業法務など幅広い法律問題に対応。歌手を志していた時期もあり、CDを全国発売した異色の経歴を持つ。
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