とある休日、自宅前に停めてあった愛車に、近所の子どもたちが遊んでいたボールが当たるところを目撃したAさん。じつは今までも、同じようなことが何度かあった。これまでは「近所付き合いもあるし…」と注意を控えていたが、この日はボンネットに傷がついていることが判明。
修理が必要な傷はさすがに見過ごせなく、Aさんは子どもの保護者に事情を伝えようと考える。しかし、もしも修理代を出してくれなかったり、「子どものやることだから見逃せ」など文句を言われたりと、トラブルになることが不安でしかたがない。
ではこのような場合で、一般的に保護者に修理代を請求できるのだろうか。またどのように話し合いをしたらいいのだろうか。弁護士法人若井綜合法律事務所の若井亮さんに話を聞いた。
子どもが車を傷つけても、親が必ず修理代を負担するわけではない
―「近所付き合いがあるから」と我慢してしまうケースもありますが、法的にはどのように対応するのが望ましいでしょうか?
近所付き合いがあるからといって、車の損害を我慢する必要はありません。感情的に責任を追及するのではなく、車の損害が発生した事実を伝え、見積書などを示した上で修理費について話し合うようにしてください。
また、今後同じことが起きないよう、子どもたちがボール遊びをする場所や、車を傷つけないための対策についても話し合っておくとよいと思います。
―そもそも子どもが他人の車を傷つけた場合、法律上の責任は誰が負うのでしょうか?
子ども本人に責任能力があるかどうかで変わります。民法709条では、故意や過失によって他人の権利や利益を侵害した場合、損害を賠償する責任を負うと定められています。
一方、子どもが自分の行為の責任を理解できるだけの知能を備えていない場合、監督義務者である親が、民法714条に基づいて損害賠償責任を負うことになります。
ただし、親が必ず損害賠償責任を負うわけではありません。子どもの年齢や行為の内容、親の監督状況などを踏まえて判断します。
―修理代はどのような基準で請求できるのでしょうか?
車に傷が付いた場合、原状回復に必要とされる範囲の修理費が損害として認められます。
ただし、修理費が車の価値を大きく上回るなどの場合、全額が損害として認められないこともあります。損害額は、車の年式や状態、傷の程度、修理内容などを踏まえて判断されます。
―トラブルになった際、まず何をしておくべきでしょうか。防犯カメラやドライブレコーダーは証拠になりますか?
まずは、車の傷を写真や動画で撮影し、傷が付いた日時や場所、状況を記録してください。防犯カメラやドライブレコーダーの映像も、重要な証拠になります。
修理をする前に修理業者から見積書を取得しておくことも重要です。修理した場合は、請求書や領収書も保管しておくようにしてください。
―当事者同士で話し合う際に気を付けるべきことはありますか。
「子どもだから仕方がない」「親なのだから当然に全額払うべき」などと決めつけず、まずは事故の状況と損害を確認することが大切です。修理費について話し合う際は、修理見積書を示して具体的な金額を伝え、メールや書面など記録が残る形でやり取りしてください。
話し合いが難しい場合や、相手が修理費の支払いを拒否している場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
◆若井亮(わかい・りょう) 弁護士
早稲田大学第一文学部を卒業後、慶應義塾大学法科大学院を修了。東京弁護士会所属。脅迫や恐喝、強要、ストーカーなどの不当要求への対応を中心に、男女間のトラブルなど幅広い案件を取り扱う。