それは、Aさんが夫と愛犬を散歩させていた早朝の出来事だ。突然、近所で飼われているノーリードの小型犬が勢いよく走ってきて、愛犬に飛び掛かってきた。
夫がとっさに愛犬を抱き上げて守ったため、けがはなかったものの突然の出来事に恐怖を感じているようだ。そのせいか、愛犬は帰宅後には震えや嘔吐などの症状が現れ、動物病院を受診することになった。
犬同士のトラブルでは、目立った外傷がなくても恐怖やストレスが原因で体調を崩すことがある。また、ノーリードや飼い主の管理方法を巡って、当事者間で責任の所在が問題になるケースも少なくない。
では、Aさんのケースで小型犬の飼い主に、愛犬の治療費などを請求できるのだろうか。また、トラブルが発生した際、飼い主はどのように対応するべきなのだろうか。弁護士法人・響の古藤由佳弁護士に話を聞いた。
散歩中の犬同士のトラブルで飼い主が知っておきたい対応の仕方
ー愛犬が体調を崩して動物病院を受診した場合、相手の飼い主に治療費などを請求できますか?
相手の飼い主に治療費などを請求できるかどうかは、事故の状況や飼い主による管理状況などを踏まえ、法的責任が認められるかによって判断されます。Aさんの場合は、小型犬にリードがつけられていなかったことから、小型犬の飼い主が適切な管理を行っていなかったことが事故の原因となっていると考えられ、 損害賠償責任が認められる可能性が高いと思います。
ーではこのように犬同士のトラブルが発生した場合、飼い主としてどのように対処するべきでしょうか?
犬同士のトラブルが発生した場合は、まず相手の飼い主の氏名・住所・連絡先を確認することが大切です。愛犬にけがや体調不良などがある場合は、必要に応じて動物病院を受診しましょう。また、当事者同士で状況を確認しながら話し合いを進め、解決が難しい場合には、弁護士などの専門家へ相談することが重要です。
―たとえばトラブル回避のためにノーリードの小型犬にけがを負わせてしまった場合、Aさんはその責任を負わなければいけないのでしょうか?
まず、トラブル回避のためにAさんがノーリードの小型犬を傷つけてしまった場合、Aさんには器物損壊罪が成立しますが、直ちに責任を負うとは限りません。その行為が、Aさん自身の財物である愛犬を守る目的で行われたもので、他に取りうる手段がなく、手段としても相当性が認められた場合には、「緊急避難」として違法性が阻却されることがあります。
もっとも、Aさんの行為が「必要な範囲」を超えていた場合は、責任を負う可能性があります。また、小型犬が逃げた後も何度も蹴るなどの過剰な暴力は、行為の相当性を欠くものとして、Aさんが損害賠償責任を負う可能性があります。
◆古藤由佳(ことう・ゆか) 弁護士/弁護士法人・響
「難しい法律の世界を、やさしく、わかりやすく」をモットーに、消費者トラブルや交通事故、借金、離婚、相続、労働問題など、民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組など、テレビ・新聞・雑誌等のメディア出演も多数。
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