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10年後「今のまま」で駅弁はあるか? 鉄道の高速化による移動“時短"の影響で…識者解説「駅弁は一期一会」

北村 泰介 北村 泰介
全国的な知名度を誇る富山駅の「ますのすし」。笹の葉に包まれ、夏場も涼しさを感じさせる
全国的な知名度を誇る富山駅の「ますのすし」。笹の葉に包まれ、夏場も涼しさを感じさせる

 お盆期間は帰省や国内旅行で全国の鉄道での移動が活発化する。そこで旅のお供となる「駅弁」だが、鉄道の高速化によって移動時間が短縮されることを踏まえ、将来的に変化を余儀なくされると指摘する声がある。新刊書籍「鉄弁」(ブックマン社)の著者で駅弁研究家の望月崇史氏に見解を聞いた。

 「いつまでもあると思うな~」という格言は駅弁にも当てはまる。望月氏は「駅弁が10年後に『今のままであるか』というと非常に微妙かなと、私は正直、思っています」と切り出した。その理由について、「鉄道の高速化です。リニアができて(品川から)40分で名古屋に着くということなると、その時間内で駅弁を食べるのか…という話になってくる」と説明した。

 ちなみに、JR東海のリニア中央新幹線は品川~名古屋を最速40分、品川~大阪は67分と現在の東海道新幹線より大幅に所用時間が短縮される計画。ただ、当初は2027年の開業が見込まれていた品川~名古屋間は現時点で2036年以降とみられている。早くても10年先の話になったわけだが、いずれにしても、日本の鉄道はこの先、所用時間の短縮化を図る動きがあることに変わりはない。

 そうした背景も踏まえ、コンビニエンスストアで全国の有名駅弁が「おにぎり」となって販売されていることが気になった。望月氏は「コロナ禍以降に出てきたもので、厳密に(オリジナルの駅弁と)同じものではなく、コンビニ仕様にアレンジはされています。駅弁業者さんが監修されていると思いますが、鉄道が高速化していく中ではいろんな販路を作っておかなければ…ということも背景にはあるでしょう。冷凍駅弁の開発も多くなっていて、自宅やオフィスで(食事として)ストックすることもできます」と多様化する現象を挙げた。

 その上で、望月氏は駅弁の存在価値について「140年あまりにわたって受け継がれてきた日本の食文化。いままで“旅のお供”という感じで捉えている方も少なくなかったと思いますけど、『駅弁を文化財に』とJR西日本さんが中心になった取り組みが去年あたりから本格化していて、鉄道文化として捉えていく流れにもなりつつあります」と指摘した。

 そこから、同氏は「駅弁の楽しみ方」を提案した。「目的地に行く道中の『駅弁タイム』そのものを楽しむこと。それも全然ありだと。『あの路線の、このシチュエーションなら食べられる』というところから考えて予定を組んでいくと面白い。駅弁を食べるためだけにそこに行くということもネタになるし、そういう旅があってもよいかと思います」。駅弁を旅の「過程」にあるものから「目的」へとシフトチェンジする視点を示した。

 駅弁を食べる「タイミング」も肝要だ。「車窓の風景が都市部、つまりビル街や住宅地が続いている間は食べるのを控えて、海や田園が広がる景色になってから食べる…といった自分なりのマイ・ルールや流儀を見つけるのもいい。例えば、東海道新幹線だったら、東京駅を出てから、駅弁の食べ始めを富士山まで待つ。のぞみで40分くらいですから、それまでメールなどの用件を済ませておいて、富士山が見えてくるあたりでお弁当を開く。あるいは、新幹線に食堂車があった時は多摩川を過ぎてから営業開始だったと聞いていますから、多摩川を渡ってから食べるとか、新横浜を過ぎてから食べるとか。東北新幹線なら大宮を過ぎるまで食べないとか…」。同氏はそう補足した。

 さらに、望月氏は「駅弁は一期一会」と定義。「駅弁を店頭で見つけて『帰りに買っていこう』と思っても、帰りの駅ではだいたい売り切れている。なので『弁当はある時に買え』です。荷物になるというなら、予約をお勧めします。行きの駅で帰りの予約をしてから目的地に行くと、帰りの旅も充実したものになります」。さらに「時間の余裕があれば、現地の料理も食べて、それが駅弁ではどうアレンジされているか比べてみると、そこに工夫が隠されていることが分かる。そんな、楽しみ方もあるんじゃないか」と付け加えた。

 望月氏は1975年生まれ。今世紀の25年間で5000個以上もの駅弁を食べてきた。書籍「鉄弁」では「西の巻」と「東の巻」の2冊に分け、計100種以上の駅弁を紹介しているが、単なる駅弁ガイドではなく、その裏にある業者の試行錯誤なども含めた物語を描いている。

 同氏は「駅弁業者さんはほぼ百年企業なんです。どういう歴史を紡いでこられたのか、なんてことのないお弁当が実はすごいんだ…という話もある。食べながら作っている人の顔も思い浮かべながら、そのストーリーを噛みしめる…という読み物としても面白いかと思います」とアピール。「お弁当の箱庭的な美しさに共感を覚える海外の方もいらっしゃる。鉄道文化であり、食文化である駅弁をぜひ体験して欲しいです」と呼びかけた。

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