ある日、クレジットカードの利用明細を見てAさんは驚いた。身に覚えのない「ゲーム課金」による30万円の請求が含まれていたからだ。
自分も妻もゲームをやらないため、小学生の息子を問い詰めると、勝手に課金していたことが判明。Aさんは「子どもが勝手にやったことなのに、全額払わなければいけないの?」と、頭を抱えるのだった。
こうした「子どもの無断課金」は、法的に取り消すことができるのだろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー親に無断で子どもが高額課金をした場合、法的に全額取り消しは可能ですか?
民法には「未成年者取消権」という規定があり、未成年者が法定代理人(親など)の同意を得ずに行った契約は、後から取り消すことができます。取り消しが認められれば、契約は最初からなかったことになり、支払ったお金の返還を求めることができます。
ただし、これはあくまで「子ども本人が契約した」と認められる場合に限られます。
ー年齢確認画面で子どもが成人と嘘をついて課金した場合はどうなりますか?
民法第21条では、未成年者が「自分は成人である」と相手を騙して契約させた場合、取り消し権が認められないと定めています。
しかし、単に画面上の「はい」というボタンをポチッと押した程度では、直ちに「詐術」とはみなされないケースが多いです。逆に、生年月日を偽って登録したり、親の身分証をアップロードしたりした場合は「詐術」とみなされ、返金が極めて困難になります。
ー「親のクレジットカードを勝手に使った場合」と「自分のお年玉で払った場合」で扱いは変わりますか?
まず「お年玉や小遣い」などの範囲内での支払いは、民法第5条3項により「自由な処分を許した財産」とみなされ、親の同意がなくても取り消すことができません。
一方、親のクレジットカードを無断で使った場合ですが、これは「子どもが親になりすまして契約した」のか、「子ども自身が契約した」のかが争点になります。ゲーム会社側が「親が使っていると思った」と主張し、親の管理不足を指摘されると、未成年者取消権の行使が難しくなるリスクがあります。
ー返金交渉をする場合、どのような手順で進めるべきでしょうか?
できるだけ早くプラットフォームに連絡してください。
各社の問い合わせフォームから、未成年者による誤操作であることを伝えます。もしそこで断られた場合は、ゲームの「運営会社」に直接交渉することになります。
その際、「いつ、誰が、どの端末で操作したのか」「親は当時どこにいたのか」などの状況を整理し、未成年者の操作であることを客観的に説明する必要があります。個人での交渉が難しい場合は、消費生活センター(188番)や弁護士に相談してください。
1番の対策は、物理的に課金できない設定にすることです。子どもの好奇心を甘く見ず、「仕組み」で防ぐことが、家庭の平和と資産を守る唯一の手段です。
●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。