漫画界の巨匠・手塚治虫がアニメ制作で描いた膨大な資料を集約した資料集「手塚治虫アニメーションアート・アーカイブス」(玄光社、税込17600円)が6月に出版された。2巻セットで総ページ800ページのボリューム。掲載資料の大半を本人が手がけ、書籍初掲載となる。日本アニメ史における手塚の足跡を知る上で貴重な資料として注目される。識者がよろず~ニュースの取材に対して、日本のアニメ史における意義を説いた。
“マンガの神様” は「アニメーション作家」でもあった。手塚は分業制のアニメ制作においても可能な限り、「自分の手で作りたい」という情熱を持ち、漫画連載で多忙を極める中でもアニメのための時間を作って、自らイメージボード(※アニメの場面を絵にしたスケッチ)や原画、絵コンテなどを描いた。
同書の1巻では、「西遊記」「わんわん忠臣蔵」「鉄腕アトム」「新宝島」「W3」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「どろろ」「千夜一夜物語」「クレオパトラ」など東映動画から虫プロ制作の作品が収められている。「パイロットフィルム」という、スポンサーやテレビ局などに作品を売り込むために制作会社が短時間の見本作品におけるイメージボードをはじめ、セル画など貴重な資料が並ぶ。
その中でも、「鉄腕アトム」に次ぐ虫プロのテレビアニメ第2作として企画されながら、制作が頓挫した幻の作品「ナンバー7」(1965年)のイメージボードも希少価値がある。また、手塚プロダクションで制作した連続テレビアニメ「ふしぎなメルモ」では手塚が400字詰め原稿用紙に書いた自筆のプロットを読むこともできる。
2巻では、それ以降、遺作に至るまでの諸作や没後に制作された作品の資料を掲載。日本テレビ系の夏休み特別番組「24時間テレビ 愛は地球を救う」の中で放映された「100万年地球の旅 バンダーブック」(78年の第1回)や「海底超特急 マリン・エクスプレス」(79年の第2回)、「フウムーン」(80年の第3回)といったレア作品が並ぶ。89年2月に60歳で急逝後、同年4月から翌年3月までNHKで放送された「青いブリンク」のキャラクターを描いた晩年の手塚によるラフスケッチなども目を引く。
企画・編集を担当したアンソロジスト(編集者)の濱田髙志氏は「漫画と同様、手塚治虫はアニメにおいても常に新しい事柄に挑み、そのハングリーなフロンティア精神で日本のアニメ文化の発展に貢献したといえるでしょう。本書に収録された資料は、本来であれば関係スタッフだけが目にすることができるものですが、読者にとって初見となるこれらの素材は、手塚の新作同然の価値を持つ貴重なものだと思います」と解説している。