家族との関係は「感謝」だけでは言い表せないものだ。そんな複雑な親子の葛藤と別れの瞬間をリアルに描いた漫画『父が言った「ありがとうな」』(作:枇杷かな子さん)が、多くの読者の心を揺さぶっている。
それは、母ががん治療の緩和病棟に入院していた時のこと。実家に残された父の対応に追われる中、作者は父の暴言に泣きながら自宅へ逃げ帰ったことがあった。暴力的で怖かった時の父の記憶がトラウマとなっている作者にとって、それは言葉にできないほど苦しい経験だった。
しばらくして、今度は父の容体が悪化する。自家用車で病院へと向かう車中、病院に着けばすぐに担架で運んでもらえることを父に伝えると、不意に後部座席の父から「ありがとうな」と言葉がこぼれた。しかし父からの仕打ちを忘れられない作者は、その言葉を素直に受け取ることができなかった。
それから数日後の夜、就寝中の作者の元に病院から「お父様の心拍が停止しました」と連絡が入る。その瞬間、許せないことは消えないし今さら好きだとも言えないけれど、自分の人生のかけらを1つ失ったような寂しさが、作者の胸を締め付けたのだった。
同作について、作者の枇杷かな子さんに詳しく話を聞いた。
ーお父様との複雑な関係性を含めたご自身の実体験を、漫画として描こうと思われたきっかけを教えてください。
父の言動にかなり悩まされて精神的にかなり参ってしまった時期がありました。ただその日々の中で心あたたまることや忘れたくない出来事もあり、それをメモしていました。その1つが父との話です。
ーお父様の最期の時間に向き合うことには、どのような葛藤がありましたか?
亡くなった時は突然のことのように感じていました。亡くなる前も父に暴言を吐かれて、それが苦しくて消えたいという思いがありました。
ー「ありがとうな」という言葉を受け取れなかった瞬間、心の中にはどのような感情があったのでしょうか?
父に対する怒りは、苦しそうな顔を見ていたら薄れて、心配という気持ちもありました。1年半が経つ今は、写真の父に色々あったけどありがとうと伝えています。
ーお父様がご存命だった頃と、亡くなられた後とで、お気持ちにどのような変化がありましたか?
だいぶ変化があり、父の良かった面を思い出したり見つけられるようになりました。もし今会えたらムカついたりするかもしれないけど、時々ひょっこり挨拶しに来ないかな…なんて思うこともあります。
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