大切な人を亡くしたあと、やり場のない寂しさに襲われることはないだろうか。枇杷かな子さんが描いた漫画『亡くなった人に会う時間』は、そんな寂しさを優しく包み込み、死者との新しい向き合い方を教えてくれる物語だ。
物語は、夫の実家で作者が義母と語り合っていた場面から始まる。テーブルの上のドーナツを眺めながら、義母は義父が亡くなってから、ずっと存在を感じると話す。
例えば、毎朝義父の写真の前にコーヒーを供え、寝る前には今日あったことを話す。その時間の積み重ねが、まるで本人がいるような安らぎを、義母にもたらしていたのだ。その話を聞いたとき、作者は「お母さんは本当にお父さんに会っているのだ」と確信する。作者もまた、大好きだった祖母を亡くし、何年経っても消えない寂しさを抱えていた1人だったからだ。
記憶の中から祖母の姿を描き起こしてみると、以前その膝に乗せてもらったときの感覚が鮮明に蘇ってきた。描き進めるうちに、それは今も自分の中に息づく「慣れ親しんだ記憶」へと変わっていく。寂しさは薄まらなくとも、動かすペンの下には確かに祖母がいると作者は実感するのだった。
読者からは「私もたまに亡父に会います。もうそこに肉体は無くても、私たちの脳内にその人がいる限り、存在は消えませんね」「その人だけの会い方…胸にきます」など共感の声があがっている。そんな同作について、作者の枇杷かな子さんに詳しく話を聞いた。
ー同作を漫画にしようと思ったきっかけを教えてください。
お義母さんがお義父さんにコーヒーをいれてる習慣があることを聞いて、「亡くなっても愛情を渡すことができるんだな」と感じ、心に残っていたのがきっかけです。
ーお義母さんの習慣を「お義父さんに会っている時間」と解釈したのはなぜでしょうか?
写真の前でお義母さんはお義父さんに話しかけ、さまざまな思い出を思い出しているんだろうなと。それはまるで、会っているようなものに近づいてる気がしたからです。
ー「ペンの下には祖母がいる」というのは、筆先を通して思い出が蘇ってくるのでしょうか?
はい。描いていると祖母への愛情や祖母の特徴を思い出すこともあります。自分でも忘れてしまっていたものを思い出すこともあります。そんなもう会えない誰かを想うすべての人へ向けて、母の話を描いたコミックエッセイ「今日もまだお母さんに会いたい」を書籍化しています。ぜひ手に取ってみてください。
<枇杷かな子さん関連情報>
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