大河ドラマ「豊臣兄弟」第13回は「疑惑の花嫁」。「豊臣兄弟」で主人公・秀長の正室となるのは慶(ちか)という女性です。慶はドラマにおいては美濃斎藤氏に仕えていた安藤守就(美濃三人衆の1人)の娘という設定になっており、吉岡里帆さんが演じています。しかし、史実において秀長の正室となった女性については謎に包まれているのです。先ず、いつ生まれたか、いつ亡くなったのか分かっていません。ドラマでは慶という名になっていますが、実名も不明です。ただ高野山奥之院(和歌山県高野町)の五輪塔に「大納言北方」(秀長の夫人)、「慈雲院芳室紹慶」とあることから彼女の法名は分かります(以下、基本的には慈雲院と記述)。ドラマでの「慶」という名も「紹慶」の「慶」からとったのではないでしょうか。
「豊臣兄弟」では慶は守就の娘で、再婚、しかも織田方の小一郎(秀長)は亡き夫の仇との設定になっておりますが、もちろん慈雲院が誰の娘として生まれたかは分かっていません。秀長と慈雲院との間には子供ができますが、それが嫡男の与一郎です。この与一郎は天正10(1582)年に残念ながら早世してしまいます。与一郎は亡くなった時に仮名を名乗っていたので、既に元服しておりました。その事から秀長と慈雲院は大体、永禄10(1567)年か9(1566)年頃に結婚したのではないかと言われています(当時の元服年齢は凡そ14・15歳)。
永禄10(1567)年というと、信長が足利義昭を奉じて上洛する前年のことです。秀長が織田家に仕えたのは永禄8(1565)年以前とされていますので、既に秀長は織田家の直臣。よって慈雲院も織田家臣の娘と想定されますが、詳しいことは分かりません。謎に包まれた秀長の正室を吉岡里帆さんはどのように演じていくのでしょうか。
(主要参考文献一覧)
・柴裕之編著『豊臣秀長』(戎光祥出版、2024年)
・柴裕之『秀吉と秀長「豊臣兄弟」の天下統一』(NHK出版、2025年)
・濱田浩一郎『秀吉と秀長 天下統一の軌跡』(内外出版社、2025年)