ヒップホップ界の大御所ジェイ・Z(56)は、ケンドリック・ラマーとドレイクの確執が、ヒップホップシーン全体にとって有益ではなかったと考えている。
ジェイは、GQの取材に対し、ソーシャルメディアの台頭が対立を激化させていると指摘した。ヒップホップを支える4つの柱(ブレイクダンス、グラフィティ、DJ、バトル)のうち、ブレイクダンスは競技化し、グラフィティも音楽シーンとの連動性を失ったとジェイは分析する。さらに、かつてはラッパーと対等なスターであったDJについても、現在は多くのアーティストにおいてその存在が匿名化していると指摘。
現在も最前線にあるのはバトルのみだと述べつつも、ジェイはその現状には否定的だ。「今のバトルは人格攻撃に変質していて、子供まで巻き込むやり方は気に入らない。ソーシャルメディア上の反発が他人の人生を破壊しようとするエネルギーに変わることは、カルチャーの成長に寄与しない」と述べたジェイ。ポジティブな要素が文化から切り離され、ネガティブな側面だけが象徴として残ってしまった現状に危機感を募らせ、音楽的なスパーリングよりもコラボレーションの重要性を説いた。
また、2025年2月のスーパーボウル・ハーフタイムショーにケンドリックを起用したことが、プロデューサーを務めるジェイら主催者側によるドレイクへの抗議ではないかという憶測をジェイは一蹴した。「単純に、その年に絶好調だった男を選んだ。二人の争いなどどうでもいい。俺はジェイ・Z(ホヴ)だぞ」と語り、陰謀説を笑い飛ばしている。ここで言及された「ホヴ」は、唯一神エホバに由来する「ジェイ・ホヴァ」を短縮した呼称であり、シーンの 頂点に立つ神のごとき絶対的な地位への自負が込められている。
さらにジェイは、かつてニューヨークの王の座を巡って激しい対立を繰り広げたナズとの確執についても言及した。二人は2000年代初頭に音楽史に残るディス合戦を展開したが、後に劇的な和解を果たしている。ジェイは「ナズは本当にいい奴だ。当時はさまざまな事象が積み重なっていたが、実はあの争いは後悔している」と、かつてのライバルへの敬意と率直な反省を口にした。