「昭和」という“近過去”と「令和」の現在をタイムマシーン(バス)で行き来するという設定の宮藤官九郎脚本のテレビドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)が2024年の放送時に話題となり、略称「ふてほど」が同年の新語・流行語大賞の年間大賞になるほどの社会現象になった。26年の年明けにも新春スペシャル版が放送されたが、こうした「設定」を先取りした実在のバンドがある。
昭和40年代(1960年代後半~70年代前半)と21世紀を自在にワープする男女デュオ「エミとゲル」で、昨年末にリリースした3枚目となる新作アルバムの発売記念公演を名古屋と東京で開催する。
“バンマス”(バンドマスター)である男性メンバーのゲル(松石ゲル)は1927年(昭和2年)生まれ。戦時中は満州におり、大連のダンスホールでジャズをプレイしていたという。女性メンバーでボーカルとドラムを担当するエミ(エミーリー)は1948年生まれの団塊世代で小学生時代から米軍基地などで歌っており、そんな2人が東京五輪前年の63年頃に名古屋で出会ってコンビを結成。65年のデビューから71年まで世相や当時の音楽性を反映した数々の作品をリリースして人気を博した…という設定だ。
ライブ会場も60年代後半あたりに存在する演者と観客という暗黙の了解で進行。たまに、その設定が崩壊しかねない発言が飛び出して笑いを誘うのも一興だ。本格デビューとなるファーストアルバム発売は23年4月なので、ドラマより先んじていたことになる。その時点で、クレージーケンバンドの横山剣が「高度成長期の熱を帯びたまま現役稼働してる夢のような音楽!」と絶賛していた。
「太陽の猫たち」と題された今回の新作は69年に公開された3人の少女をヒロインとする映画のサントラ盤という設定のアルバム。ファズ(※音響機器によって生み出されるギターの歪んだ音)が効いたGS、民謡、歌謡曲、ゴーゴーなどのサウンドが劇中のセリフも交えながら繰り広げられている。
新年の公演は1月24日に地元・名古屋の「今池TOKUZO」、2月1日には東京・下北沢の「フラワーズロフト」で歌謡ユニット「星屑スキャット」のギャランティーク和恵をゲストに迎えて開催する。