学生のAさんは、大学のレポート作成のために図書館で資料を探していた。必要なページが十数ページ以上あったため、「コピー代もかかるしスマホで撮っちゃおう」と考え、必要な箇所を撮影し始める。
しかし、Aさんの行為に気づいた司書が彼の傍にやってきて、「館内での資料の撮影はご遠慮ください」と注意をする。しかしAさんは「自分だけで見るメモ代わりなのにダメなの?」「家で自分の本を撮るのと何が違うの?」と納得がいかない。
図書館の本をスマホで撮影する行為は、法的にどのような問題があるのか、まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー図書館の本をスマホで撮影する行為には、どのような問題がありますか?
原則として、著作権侵害のリスクが高い行為です。
著作権法では「私的使用のための複製」は認められていますが、図書館での複製に関しては、同法第31条により「図書館等の管理者が主体となって行うこと」などの厳格な要件が定められています。
利用者が個人のスマホで勝手に撮影する行為は、図書館側の管理(チェック)を経ないため、第31条の特例が適用されません。結果として、権利者の許諾を得ていない「無断複製」となり、複製権の侵害にあたる可能性が高いのです。
ー図書館に設置されているコピー機での複写は認められているのに、なぜ撮影はダメなのですか?
決定的な違いは「ルールの遵守を誰が管理しているか」です。
図書館のコピー機利用は、法第31条に基づき「著作物の一部分(原則として半分以下)」であり、「営利を目的としない」などの条件を、司書などの専門家が確認・管理することを前提に認められています。
一方、個人のスマホ撮影では、利用者が「本を一冊まるごと」撮影してしまうことを物理的に防げません。違法な複製が野放しになる恐れがあるため、図書館としては管理責任を果たすためにスマホ撮影を一律に禁止せざるを得ないのです。
ーもし無断撮影が見つかった場合、どのような法的責任を問われますか?
著作権侵害(複製権侵害)が成立した場合、民事と刑事の両面で責任を問われる可能性があります。
民事上では、著作権者から行為の差止請求や、損害賠償請求を受ける可能性があります。また、刑事罰としては、告訴が必要な親告罪が原則ですが、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(あるいはその両方)という非常に重い刑が定められています。
「学生のレポート用だから」という軽い気持ちであっても、法的には重大なペナルティが課されうる行為であることを認識しなければなりません。
●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。