休日を活気に満ちた道の駅で過ごす人もいるだろう。地元の新鮮な野菜や果物、香ばしいお菓子が並び、その魅力を伝えるために「試食」が提供されている光景は珍しくない。しかし、「無料だから」という言葉に甘えすぎることで、思わぬトラブルに発展する可能性も否定できない。
道の駅の試食コーナーで「お腹がいっぱいになるまで」食べ歩き、結局何も買わずに店を出る行為は、単なるマナー違反なのだろうか。それとも法的なリスクを孕んでいるのか、まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー「試食したからには買わなければならない」という法的な義務は発生しますか?
試食をしたからといって、その商品を購入しなければならないという法的義務は発生しません。
試食は、店側が商品の宣伝や販売促進のために、消費者に「無償で提供」しているものです。法律上、これは贈与の一種、あるいは契約締結に向けた誘引行為とみなされます。
試食をした時点で売買契約が成立しているわけではないため、食べた後に「口に合わない」「価格が見合わない」と判断して購入を断ることは、消費者の自由です。
ー最初から「買う気がない」のに試食を繰り返す行為は、何らかの罪に問われる可能性はありますか?
最初から購入する意思が全くないのに、あたかも検討しているかのように装って不当に多くの試食を繰り返す行為は、いくつかの法的問題に触れる可能性があります。
例えば、店側に損害を与える目的で大量に食べ尽くし、営業を妨げた場合には「威力業務妨害罪」や「偽計業務妨害罪」に問われるリスクがゼロではありません。しかし、現実的には「買う気があったかどうか」という内心を証明するのは非常に難しいため、即座に詐欺罪などに問われることは稀です。
ただし、常習性や悪質性が高い場合には、店側から立ち入りを禁止されるなどの措置をとられる可能性は十分にあります。
ー店側が「お一人様一つまで」と明示しているのに、何度も列に並んで食べる行為はどうなりますか?
店側が条件を提示している場合、その条件を超えた試食は店側の意思に反する占有の移転となり、厳密には「窃盗罪」や、店を欺いて利得を得る「詐欺罪」に該当する可能性があります。
また、お店には施設管理権があるため、ルールを守らない客に対しては退店を命じることができます。その命令に従わずに居座り続ければ、「不退去罪」に問われることもあります。ルールが明示されている以上、それを破る行為はもはや「試食」ではなく、不法な搾取とみなされるリスクがあるとお考えください。
ーもし店側が「試食した人は買ってください」と強要した場合、客は断ることができますか?
断ることができます。
むしろ、店側が試食を盾に強引に購入を迫る行為は、消費者契約法における「困惑による取り消し」の対象になる可能性があります。また、相手を脅して無理やり買わせようとすれば「強要罪」や、消費者の自由な選択を妨げる不適切な営業行為として行政処分の対象にもなり得ます。
試食はあくまで納得して購入してもらうための判断材料に過ぎません。店側が購入を強制する権利はないのです。
●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。