雪も降るほど冷え込みが激しい季節になってきた。こんな時分は温泉にでも使ってゆっくりしたくなるもの。温泉といえば日本三名泉が浮かぶ。有馬温泉、下呂温泉、そして、草津温泉がある。
だが、そこに罠がある。日本の草津はふたつあるのだ。しかも、温泉がある草津は群馬県にあるが、滋賀にある草津には温泉がないのだ。
そんなあるあるを逆手に取って滋賀県草津市観光物産協会(@kusatsu_tourism)が「温泉ないまんじゅう」を開発した。
エイプリルフールの企画のような「温泉ないまんじゅう」。だが、これが名物となれば、滋賀の草津には温泉がないことが伝わりそうだ。……伝わるだろう。
昨年12月11日からは、東京の滋賀アンテナショップでも販売されている。本気の展開を実施中だ。
「温泉ないまんじゅう」は、群馬県の草津温泉観光大使である「ゆもみちゃん」も認知済みだ。本来は来るはずなのは群馬県の草津温泉なのだから、協力関係になるのも納得だ。
「温泉ないまんじゅう」だけではなく、ゆるきゃら「おんせんどろぼう」も生み出した。なお、「おんせんどろぼう」の目的は琵琶湖を温泉にするために、温泉をどろぼうするというもの。なにそのぶっ飛んだコンセプト。
一般社団法人草津市観光物産協会の企画・広報担当である谷坂優希さんに、「温泉ないまんじゅう」についてや滋賀県の草津市の観光についてのお話をきいた。
ーー「温泉ないまんじゅう」に滋賀県草津市の要素はありますか。
谷坂:はい、ございます。以下の点に滋賀県草津市ならではの要素を取り入れております。
製造は草津市の和菓子店「和・菓ふぇoto」が担当しており、地元の職人による手作りです。デザインもこだわりがあります。おまんじゅうの焼き印は温泉のマーク「ない」ことを意味する斜線を入れたもので、「草津市に草津温泉はない」ということを視覚的に訴求するものです。
ーーこの商品を作ろうと企画が立ち上がったきっかけはどんなもので、「温泉ないまんじゅう」の製造期間はどれほどかかりましたか。
谷坂:企画のきっかけは、「間違えられる」という草津市ならではの“弱み”を、むしろ“ネタ”として昇華できないか?というアイディアから始まりました。ユーモアを交えつつ、「ないこと」を武器にする新しいPRとして開発したものです。着想から販売までは約半年間かかっています。
ーー「ない」概念饅頭といえば、和歌山は道成寺の釣鐘まんじゅうが浮かびましたが、参考にはしましたか。
谷坂:釣鐘まんじゅうの存在は認識しておりましたが、今回の商品については、草津市が直面している「草津温泉との混同」という現実をテーマにした、完全オリジナル企画として立ち上げたものです 。
ーー滋賀県草津市に来た場合の観光スポットはどんなものがありますか。
谷坂: 滋賀県草津市は、古くから東海道と中山道が交わる交通の要所として栄えてきた歴史あるまちです。代表的な観光スポットには以下があります。
まずは、草津宿本陣があります。江戸時代の大名の宿泊施設が現存しており、国指定史跡として当時のままの構造が楽しめます。
他にも、日本最大の湖「琵琶湖」の自然と人の歴史を学べる体験型の琵琶湖博物館。ハスやスイレンなど季節の水生植物が楽しめる植物園である水生植物公園みずの森。
そして、夕日が美しく、サイクリングやピクニックにもおすすめのエリアであるびわ湖の湖岸風景があります。最近はサイクリングイベントやアートイベントも盛んで、自然と文化の両方が楽しめる場所として注目されています。
ーー実際、間違えて来てしまったヒトはどれほどいるのか把握しているのでしょうか。
谷坂: 正確な統計はございませんが、弊協会や観光案内所には間違いのお問い合わせが年間を通して100件程度あり、なかには、群馬県の草津温泉と勘違いして来られたという方も実際にいらっしゃいます。その都度、職員が丁寧にご案内しております。
ーー投稿の反響へのご感想をお聞かせください。
谷坂:SNS上では「攻めてる!」「滋賀の草津のこと初めて知った」といった反響があり、話題になったことを嬉しく思っております。これをきっかけに、「温泉はないけどいいとこ草津」を少しでも多くの方に知っていただければ本望です 。
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「温泉ないまんじゅう」と「おんせんどろぼう」。ふたつの知名度が上がることで、滋賀の草津には温泉がないことが世に知らしめられる日は来るのだろうか。きっと、その日が来るであろうことを祈るばかりである。