宝塚歌劇団元星組トップスターの麻路さきが、大阪市内で「エリザベート TAKARAZUKA30周年 スペシャル・ガラ・コンサート」のインタビューに応じた。
『ベルサイユのばら』に並んで、宝塚を代表する作品のひとつ『エリザベート』が初演されて、2026年で30年。それを記念して、ガラコンサートが行われる。初演は当時の雪組トップスター・一路真輝の退団公演として上演され、麻路は続演の形で死のトートを演じた。「当時は、退団公演としてやった代表作を、他の組で上演していいのかという雰囲気がありました。例えば『ベルばら』や『風と共に去りぬ』とか、既に何度も再演された作品ならいいですよ。だけど一路さんのためにと上演した作品を、私たちたやっちゃっていいの?みたいな空気はありました」と振り返る。
一路が男役としては華奢で、歌を得意としたトップだったのに対し、麻路は大柄でいかにも男役然とした包容力が魅力だった。「だから『エリザベート』を続演したいという話を伺ったとき、すぐに『絶対いやです』と言いましたよ」と振り返る。だが結局、続演することに。「決まってしまったからには、どうにかしないといけないのに、批評が怖くて。なんでこんな風にしちゃったの?って言われるのも嫌だし、やっぱり雪組には敵わないよねって絶対言われる…と、ネガティブなことしか考えられない。本当に逃げたかったですね」と大きな挑戦だった。
稽古場では、麻路トートを作り上げるため必死だった。演出の小池修一郎氏と、とことん話し合った。その結果。エリザベートの寝室で、手から先に登場する名シーンが誕生した。「トートって“死”なので、どうすればすっと現れたように見えるかということに、苦心しました。私は体が大きいから『出てきました!』ってなりがちなので、いかに『そこにいたんだ!』みたいにするか。だから手から出たりとか」と試行錯誤の結果だった。
それでも初日が明けるまでは不安の連続。手応えを感じたのは、初日が開けてからだった。「客席で泣いているのが見えた」という瞬間に「あ、うまくいったかもしれない!」と安堵したという。それは一路の退団公演のための『エリザベート』が、宝塚の名作『エリザベート』となった瞬間でもあった。以来、宝塚では全組上演され、何度も再演を重ねる人気の演目となった。トップのタイプや得意分野が違っても、トートにはそれぞれによって違った魅力があることを証明し、成功に導いた麻路は『エリザベート』を宝塚を代表する作品に押し上げた1人だ。
2024年には宝塚を代表する『ベルサイユのばら』が初演50周年を迎え、麻路や一路も出演したスペシャルガラが行われた。「私が宝塚入るきっかけになった鳳蘭さんや安奈淳さんがといった先輩方が、『ベルばら』50周年で、当時の曲を歌っていらっしゃているんですよ」とファンモードに突入。だが一方で、それを見たときに一路と「そうか!『エリザベート』で初演、続演した私たちも、そういう存在になるのかな?私たちもレジェンドなんだねって!笑い話にしていました」と楽しそうな様子を見せた。
「当時は自分にとってマイナスな企画だと思っていましたし、それがまさか自分の代表作の1つになるなんて」と笑う。それだけに「長く続いた作品ですから。その時々の出演者全てに魅力がある。だから客席も公演ごとに違った層になるのかな。当時の私を応援して下さった方々も、是非みたい!とおっしゃって下さっている。当時背中を押して下さった全ての皆様に感謝です」と笑顔を見せる。退団後は宝石商と結婚し、ブラジルに住む。「ガラコンサートが終わるまでは日本にいます。普段はヒールも履かない生活ですが(笑)、公演のために体力も付けて、喜んで頂ける公演にしいたいですね。ぜひみなさまもご覧下さい!」と呼びかけた。
ガラ・コンサートでは組ごとや30周年スペシャルバージョンを上演。東京国際フォーラム ホールC2026年2月6日~20日、梅田芸術劇場メインホール2月28日~3月15日、愛知・御園座3月23日~25日。