異業種交流会やセミナーに参加して、活発に名刺交換している人は多いだろう。新たなビジネスチャンスの芽生えを感じる瞬間であるが、後日、交換した相手から同意のないままメールマガジンが送られてきて、戸惑いを覚えた経験はないだろうか。
このように交換した名刺を無断で何かの登録に使う行為は、法的に許されるのであろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー名刺交換で得たメールアドレスを、本人の明確な同意なくメールマガジンに登録する行為は法的に問題ありますか
原則として、広告や宣伝を含む電子メールを送る際には、あらかじめ受信者の同意を得る「オプトイン」が義務付けられています。しかし、この法律には例外規定があり、「自己の電子メールアドレスを通知した者」に対しては、個別の同意なくメールを送信することが許されています。
名刺交換は、この「通知」に該当すると解釈されるため、名刺に書かれているメールアドレスにメールマガジンを送ること自体が、直ちに違法となるわけではありません。
ただし、これはあくまで法律上の解釈であり、受け取る側が快く思うかどうかは別の問題です。ビジネスマナーとしては、一方的にメルマガに登録するのではなく、最初の挨拶メールで今後の情報提供の可否を尋ねるなどの配慮が望ましいでしょう。
また、名刺情報をデータベース化して管理する場合などは、「個人情報保護法」の規制対象となります。利用目的の範囲を逸脱した使い方や、不適切な管理は問題となる可能性があります。
ー受信者側が、迷惑なメールマガジンを止めるための手段はありますか
特定電子メール法では、送信者に対して、受信者がいつでも簡単に配信を停止できる手段(オプトアウト)を提供することを義務付けています。通常、メールの末尾などに「配信停止はこちら」といったリンクが記載されているのはそのためです。
まずは、その手続きに従って配信停止を要求してください。もし、配信停止手続きを踏んだにもかかわらず、その後もメールが送られてくる場合は法律違反となります。このような悪質なケースでは、総務省所管の「迷惑メール相談センター」などの公的機関に情報提供を行うことができます。
ー違反した場合、送信者側にはどのような罰則科される可能性がありますか
特定電子メール法に違反した場合、送信者には厳しい罰則が科される可能性があります。前述したような、受信者が配信停止(オプトアウト)を要求したにもかかわらずメールを送り続けた場合や、送信者情報を偽って送信した場合などが違反行為にあたります。
具体的な罰則としては、総務大臣および消費者庁長官による措置命令が出されることがあります。この命令に従わない場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金(法人の場合は3000万円以下の罰金)」が科される可能性があります。
●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。