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なぜ車は横断歩道で止まらない?歩行者優先の「常識」と「法律」のギャップ【弁護士が解説】

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小学生の子どもと手をつないだ男性が、信号機のない横断歩道の前で待っている。しかし車の往来が激しく、彼らは横断歩道をしばらく渡れないでいた。ようやく1台の車が止まってくれたかと思えば、後続車がクラクションを鳴らしながら追い越していく。そんな光景を見たことがある人は少なくないだろう。

多くの歩行者が日常的に経験するこの光景は、道路交通法で定められた「横断歩道における歩行者優先」の原則が、いかに浸透していないかを物語っている。実際に、横断歩道の前に歩行者がいるにもかかわらず一時停止をしなかった場合、どのような罰則が科せられるのだろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。

ー横断歩道で車が一時停止しなかった場合、どのような違反になりますか

歩行者が待っているにもかかわらず、横断歩道の前で一時停止せずに通過した場合、「横断歩行者等妨害等」という明確な道路交通法違反になります。道路交通法第38条では、横断歩道を横断しようとしている、または横断中の歩行者がいる場合、車両は横断歩道の直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げてはならないと定められています。

ーこの違反に対する罰則(違反点数、反則金)はどれくらいですか

この違反には、刑事罰として「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科される可能性があります。また、行政処分として、違反点数2点が加算され、車種に応じた反則金が課せられます。例えば、普通車の場合は9,000円、大型車は12,000円、二輪車は7,000円、原付は6,000円です。

ー「歩行者が渡るか分からなかった」「急に止まると危ない」といった言い分は、法的に通用しますか

これらの言い分は法的に通用しないでしょう。まず、「歩行者が渡るか分からなかった」という点ですが、法律では「横断しようとする歩行者がいるとき」には一時停止義務があると定めています。

横断歩道の手前で待っている人がいれば、それは「横断する意思がある」と判断するのが原則です。そもそも、横断歩道に近づく際は、横断する人がいないことが明らかな場合を除き、その手前で停止できる速度で進行しなければなりません。

次に、「急に止まると危ない」という主張ですが、これも同様です。横断歩道の手前では、いつでも安全に停止できる速度で走行することが求められています。十分に減速せずに横断歩道に接近し、結果として急ブレーキが必要になる状況を作ること自体が、適切な運転とは言えません。

ー「歩行者がお辞儀をして譲ってくれたから行った」場合はどうなりますか

原則として、たとえ歩行者から「お先にどうぞ」というジェスチャーがあったとしても、ドライバーは一時停止する義務があります。法律上、横断歩道における優先権は歩行者にあり、その権利を放棄するという考え方は基本的にありません。

それでも歩行者が明確に渡らない意思を示し続けているなど、状況次第では違反とされない可能性もありますが、その判断は明確ではありません。ドライバーと歩行者の間で「譲り合い」のつもりが、結果として事故につながる危険性もはらんでいます。

安全を最優先するならば、歩行者のジェスチャーにかかわらず、まず一時停止し、歩行者が安全に横断し終えるのを待つべきでしょう。

●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 

大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。

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