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快挙!韓国ミュージカルがトニー賞で6冠を達成!脚本家が喜び語る「複雑な気持ちだった」

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2016年に韓国で上演されたミュージカル「メイビー、ハッピーエンディング」キャスト(出典:作品公式X@mhe_161220)
2016年に韓国で上演されたミュージカル「メイビー、ハッピーエンディング」キャスト(出典:作品公式X@mhe_161220)

 「第78回 トニー賞」で6冠を達成した韓国ミュージカル「メイビー、ハッピーエンディング」の記念記者会見がこのほど、ソウルのコミュニティーハウスマシルで行われ、パク・チョンヒュ氏とプロデューサーのハン・ギョンスク氏が参加。報道陣からの質疑応答に対応し、さまざまなエピソードを語った。

 2024年11月、ニューヨークのベラスコ劇場で開幕したブロードウェイ公演は「第78回 トニー賞」で、作品賞・演出賞・主演男優賞・脚本賞・音楽賞・舞台デザイン賞の6部門で受賞する快挙を達成。

 1947年に始まったトニー賞は、アメリカの演劇界で最も権威ある授賞式であり、ブロードウェイの500席以上の劇場で、その年に上演された新作が対象となる。映画界の「アカデミー賞」、テレビ界の「エミー賞」、音楽界の「グラミー賞」とともに、アメリカの4大芸術賞の1つに数えられている。

 そんな中、本作の6冠達成は、韓国の脚本家が執筆し、韓国で初演が行われ、韓国を舞台にした創作ミュージカルとしては初の記録であり、さらに深い意味を持つ。これに対して、パク氏は「とてもうれしく、感謝している。テーブルの上に置いたトロフィーを見ながら朝食を食べていて、とても不思議な気持ちになった」「象徴的なトロフィーが、僕のみすぼらしいニューヨークの家にあること自体が不思議だった。賞の重みを感じながら、これからもっと脚本家として頑張っていかなければならないと思った」とコメントした。

 「メイビー、ハッピーエンディング」ブロードウェイ公演は、ニューヨークの「ドラマ批評家協会賞」でミュージカル作品賞を、「ドラマリーグアワード」でミュージカル作品賞・演出賞を、「外部批評家協会賞」でブロードウェイ新作ミュージカル賞・作詞作曲賞・脚本賞・演出賞を、「ドラマデスクアワード」でミュージカル作品賞・音楽賞・作詞賞・脚本賞・演出賞・舞台デザイン賞を、「ドリアンシアターアワード」でブロードウェイミュージカル賞を受賞するなど、あらゆる主要授賞式で好成績を収めた。

 この勢いに乗り、「トニー賞」では6冠を達成したことで、全ての主要授賞式で作品賞などの中心部門を総なめに。パク氏は当時の状況を振り返り、「僕もウィル・アロンソン氏も、期待しないように努める性格。期待してダメだった時の落胆を恐れるタイプだ。だから、ノミネートされた時はうれしかったけど、期待しないようにした」「授賞式当日は、とても忙しくてマラソンのようだった。うれしいけど困惑した。僕が、こんな賞を受賞してもいいのかと思いながらも、全て終わったから、ゆっくり眠れるという安心感もあった。複雑な気持ちだった」と打ち明けた。

 「メイビー、ハッピーエンディング」は、近未来のソウルを舞台に、人間の手助けをするために作られたヘルパーロボットのオリバーとクレアが、愛という感情に目覚める過程を描いたミュージカルで、パク・チョンヒュ氏とウィル・アロンソン氏が共同で脚本を手がけた。2014年の構想から2015年のトライアウト公演、2016年の現地初演を経て、2024年まで5シーズンに渡って上演され、2020年には日本、2021年には中国でも上演された。

 パク氏はこの日、本作誕生のきっかけを明かした。「長い間付き合っていた人と別れ、親しい友人が癌にかかり8カ月でこの世を去った時期があった。その時、『その人たちを好きにならなければ、傷つくこともなかったのに』と思った」という。また、「そんな時、カフェで僕が好きなシンガー・ソングライターの新曲が流れた。孤独になった人間を、ロボットに例えた歌詞だった。その時、周りを見渡すと、みんなスマホやパソコンばかり見つめていた。目の前にいる人よりも、モニターを見つめる世の中になったのだと気づき、ロボットを主人公にして、自分が経験した別れや喪失の痛みを描いてみようと思った」と付け加えた。

 本作のブロードウェイでの成功は、作品の構想初期から、ローカライズを念頭に置いて作業した、2人の脚本家の長きにわたる情熱と努力によるものだ。2016年にニューヨークでの朗読劇から始まり、2020年にアトランタでトライアウト公演を経て、コロナ禍を過ぎた2024年11月、ニューヨークブロードウェイでの上演に至るまで、ローカライズを目指して作品を持続的に発展させてきた。その結果、韓国を舞台にしたオリジナルストーリーというハンデを乗り越え、「ホタル」という名称のファンが生まれるなど、SNSを中心に一気にヒットした。

 移民として多くの苦労を経験したというパク氏は、「僕はここの人たちの一員にはなれず“よそ者”でしかないとずっと考えていた。全てを諦めて、韓国に帰ったほうがいいのではないかとも考えたが、それを乗り越え、ある時すばらしい人たちと出会い、良い機会を得ることができた」「韓国の観客がたくさん共感してくれたという経験のおかげで、アメリカでも自分の意見を貫くことができた。韓国の観客が僕の原動力だった」と、特別な思いを語った。

 本作のブロードウェイでの成功の秘訣については、「結果が良かったからこそ言えることだが、実は最初は、有名な原作もなく、知名度のある俳優もいないため、この作品は成功しないだろうという意見のほうが多かった。でも、そういう部分がかえって斬新に映ったのではないかと思う」と説明。

 「トニー賞受賞」という記録は栄誉であると同時に、次のステップに大きなプレッシャーを与えるものでもある。これについては「プレッシャーがないと言えば嘘になるけど、そのプレッシャーに押しつぶされてしまうと、自然な作品が書けなくなると思う。幸いにも、僕にはウィルという創作パートナーがいるので、今までどおり、お互いを補い合いながら作品を作っていく」と、淡々と語った。

 今後の活動については「構想中の作品がいくつかあるが、まだ話せる段階ではない。僕のエネルギーが尽きる前に発展させたい」と明かし、「『イル・テノーレ』と『ゴースト・ベーカリー』が、早く韓国で再演されることを願っているし、海外の観客にも見てもらいたい」と付け加えた。

 韓国ミュージカルの地位を高めて戻ってきた「メイビー、ハッピーエンディング」の10周年記念公演は、10月30日から2026年1月25日まで、斗山(ドゥサン)アートセンターヨンガンホールで上演される。これに関して、ハン・ギョンスクプロデューサーは、「韓国公演は、ブロードウェイ公演の手引きだと考えている」「10周年を振り返りながら、足りない部分を補っていきたい。作品の持つ韓国の情緒や感情を維持しながらも、新たなアイデアを盛り込もうと努めている」と先を見据えた。

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