外食中、となりの席の会話がふと耳に入ることがある。その会話のなかで事件めいたひと言が飛び出すと、食事どころではなくなってしまうだろう。
ある日、はるな鈴さんがカフェで昼食しつつ読書を楽しんでいると、隣の席の年配女性が「セロリの酒粕漬けがおいしい」と話し始めた。その後も女性は、おいしいけれど食べていると心臓がばくばくしてくるのだと話を続ける。
なんとなく会話を聞いていたはるなさんは、女性の心臓の鼓動が早まった理由は酒粕のアルコールの影響だろうと考えていた。そんな会話を続ける女性だったが、彼女が次に放ったひと言は、はるなさんに衝撃を与えることに。
女性は「だからね、旦那のご飯にちょっとずつ、小鉢に入れて出しているの」と言葉を続けたのだ。この言葉を聞いたはるなさんの思考は、「え?どっち?どっちのイミ?」と混乱した。
美味しいものを旦那さんに好意で分けるためなのか、それとも自分の食べる量を減らすためなのか、一体どんな意味の言葉だったのだろうか。はるなさんはこの時に読んでいたミステリー小説の内容に引っ張られ、さらに妄想を膨らませていく。
その結果、はるなさんの妄想では、「犯人は毎晩、セロリの粕漬けを少しずつ食べさせていたのさ」と名探偵が登場し、トリックを披露し始めるのだった。同作について、作者のはるな鈴さんに詳しく話を聞いた。
―「旦那さんに少しずつ出している」という発言を聞いた女性のお連れの方の反応はどうでしたか?
対面の女性はおっとりしたタイプなのか、「あら~、そうなの~」と差し障りのない反応だったように思います。女子会話にありがちな『相手の話を半分くらいしか聞いてない』状態だったのかもしれません(笑)
―隣の会話から想像がふくらむことは、よくあるのでしょうか?
盗み聞きする気はないのですが、意外と大きな声でお話しされている方は多く…変わった話題だとつい耳に入ってしまいます。この時は読んでいた本がちょうど章終わりだったタイミングに重なり、脳内に金田一君が出てきてしまいました。
―ミステリーは普段からよく読まれているのですか?
学生時代からミステリーが好きでよく読んでいました。子供が小さいうちは、なかなか時間が取れませんでしたが、最近は意識して読むようにしています。でも、現実の方が「なんだそれ!?」という話がよく転がっていますね。まさに『事実は小説よりも奇なり』です。
<はるな鈴さん関連情報>
▽note
▽x
▽電子書籍『ポンコツParis日記』 (Amazon)