ベストセラー『夜回り先生』が「新編」で再出版 ガン闘病の水谷修氏「最後の一冊」幼少期や青春時代を加筆

北村 泰介 北村 泰介
教育家の水谷修氏が新たに加筆、再構成した著書「新編 夜回り先生」(鳳書院)
教育家の水谷修氏が新たに加筆、再構成した著書「新編 夜回り先生」(鳳書院)

 教育家の水谷修氏(69)が2004年に出版してベストセラーとなった著書をベースに、自身の幼少期や青春時代の出来事などを新たに加筆、再構成した「新編 夜回り先生」(鳳書院、税込1650円)が17日に発売される。

 水谷氏によると、「夜回り先生」は3年前に紙の書籍としての出版が終了したが、少年院に勤める法務教官からの「ネットが使用できない施設に入所している少年たちのために本の再出版をして欲しい」という切実な要望を受け、今回の新刊が実現した。

 原本に書いたエピソードを中心に、自身の幼少期から青春時代の波乱万丈の体験を加筆した。その理由について、水谷氏は多くの子どもたちから「先生はどんな子ども時代や青春時代を過ごしたの?」と聞かれたことで、「同じ悩みや苦しみと共に生きてきたことを伝えたかったから」と明かした。

 3歳の時に父を失い、横浜で教員をしていた母とも経済的な事情から離れ、山形の祖父母に育てられた幼い日々。その母とは小学校高学年から共に暮らし、夜の世界に沈んで自暴自棄になっていた大学生時代には欧州留学という〝救済の道〟を後押しされる。東西に二分されたドイツでのヒッピー生活、パリで出会った日本人の売春婦を現地のマフィアから救出するといった〝映画〟のようなエピソードも描かれる。

 そして、教員となり、夜間高校に転勤となった1991年から「夜回り」が始まり、真摯に向き合った少年、少女たちとの物語が綴られていく。

 04年の「夜回り先生」出版と同時に「水谷青少年問題研究所」を設立。メールアドレスと電話番号を公開し、関わった子どもの数は約53万人になるという。今回の「新編」出版に対し、水谷氏は「夜回り先生シリーズ、最後の一冊」とし、「この本で、関わった子どもたちについて書くことを止めます」と明言している。

 ガンとの闘いも続く。07年に最初の手術を行い、既に7回の手術を繰り返してきた水谷氏。昨年の検査では「今のところ次の転移は発見されていません」という状況で、現在も精力的な活動を続けているが、来年で古希を迎える年齢となり、自身の〝残り時間〟を強く意識している。

 水谷氏は本書の「あとがき」で「最後の日まで、夜の世界で、夜の世界の子どもたちを昼の世界に戻すために生きていきます。これが、夜回り先生・水谷修に唯一、許された生き方です。この本が、多くの子どもたちの心に届きますように――」とメッセージを送っている。

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