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子どもが不登校になった時どうすればいい?大丈夫と言い切れる理由とは【心療内科医が解説】

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子どもが不登校になると、「このまま学校に行けなかったら、将来はどうなるのだろう」「親として何をすべきなのか分からない」など考え、不安と焦りで胸が押しつぶされそうになる保護者は少なくない。

心療内科医の明橋大二さんは、新刊『不登校からの回復の地図』で「不登校でも、大丈夫」と繰り返し語る。なぜそのように言い切れるのか。不登校に悩む保護者が知っておきたい、回復していくために大切なことを聞いた。

ー 「不登校でも大丈夫」と言い切れる理由は何でしょうか?

まず、子どもは休むことで必ず回復していく力をもっているということです。不登校は病気ではなく、心が「これ以上無理をしないで」とブレーキをかけている状態。安全な場所でしっかり休むことができれば、気力も体力もゆっくり戻っていきます。

また、長い目で見れば多くの子どもが立ち直っているという事実があります。「文部科学省からの委託を受けて、ある社会学者が中学3年生の不登校の子どもたちの5年後を追跡した調査があります。その調査では、不登校だった子どもの約8割が、学校や仕事へと歩き出していることが分かりました。

一方、残りの2割の中には、いじめによる深い傷があったり、家族との関係がうまくいかず責められ続けてしまったりと、さまざまな事情が重なって回復に時間がかかるケースが含まれています。また、その時点で仕事や学校に就けていなかった、というケースもあります。「不登校だから回復しない」という意味ではありません。

さらに、不登校の経験を経た多くの子どもが「自分のペースを取り戻せた」「生き方を考え直すきっかけになった」と振り返っています。不登校は決して人生のマイナスではありません。子どもが本来の自分らしさを取り戻すための、大切な時間になることすらあるのです。

もちろん、回復は一足飛びには進みません。その過程には波があり、段階があります。しかし、長期的に見れば、心はその波を繰り返しながら確実に回復していきます。だから私は「不登校でも、大丈夫ですよ」と自信をもってお伝えしています。

ー 不登校の子どもには、どのようなことが起きているのでしょうか。

不登校の子どもには、心と身体の中で“防衛反応”が起きています。私は、大きく2つのタイプがあると考えています。

ひとつは、心身の疲れが限界を超えた結果、スイッチが切れてしまうような「オーバーヒート」の状態。電気器具が熱くなりすぎると自動的に止まるように、子どもの心と身体も「これ以上はつらい」というサインを出して学校に行けなくなります。これは病気ではなく、むしろ自分を守るための自然な反応です。

もうひとつは、不安や恐怖が強くなり、身体が動かなくなってしまう「凍りつき反応」です。「行かなきゃ」と思っても朝になると布団から出られない、意欲や思考力が落ちてしまう。これは意思や甘えではなく、自律神経系が働いて起きる反応で、回復には時間がかかります。

周囲から見ると「学校に行けそうなのに」と思える状況でも、その子にとっては大きな脅威に感じられることがあります。だから不登校は、怠けではなく、心と身体が限界に達した結果として起きる正常な防衛反応なのです。

ー 不登校からの回復において大切なことは何でしょうか。

最も大切なのは、学力や登校状況よりもまず心の回復です。不登校になった時、多くの子どもは自分を責め、親御さんも「育て方が悪かったのでは」と悩み、親子ともに自己肯定感が下がっています。

しかし、安心できる環境でしっかり休むことができれば、少しずつ元気が戻り、「不登校でもすべてがダメではない」と感じられるようになります。やがて過去を捉え直す力が育ち、「頑張りすぎていた」「これは自分のSOSだった」と気づけるようになります。こうした気づきが自己肯定感を回復させ、その後の進路に関わらず、自分らしい生き方を選べるようになります。不登校は決してマイナスではなく、その子の人生に豊かさをもたらすこともあります。

その上で、親御さんがまず意識すべきことは、たった3つです。

①疲れている子どもを、これ以上疲れさせない

②傷ついている子どもを、これ以上傷つけない

③不安な子どもを、これ以上不安にさせない

この3つが守られてこそ、子どもの心は安心し、回復が進みます。元気になる前に登校を促したり、転校・フリースクール・在宅学習を急がせたりすると、かえって回復が遅れることがあります。まず必要なのは、安心できる場所でゆっくり休むことです。

回復には時間がかかりますが、心が整いはじめれば、子どもは必ず自分の力で歩き出します。焦らず、子どものペースを尊重して見守ることが、もっとも確かな支えになると考えています。

◆明橋大二(あけはし・だいじ)心療内科医。子育てカウンセラー。NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。

心療内科医としての勤務やぱれっとでの活動を通して、30年以上不登校の子どもたちを支援。シリーズ累計500万部を突破した『子育てハッピーアドバイス』(1万年堂出版)など著書多数。新刊『不登校からの回復の地図』(青春出版社)では、長年の診療の中で「これだけはどうしても伝えたい」と感じてきた、不登校の理解と支援において大切な視点を、わかりやすく1冊にまとめている。

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