みそ製造販売の「ナカモ」(本社・愛知県清須市)は主要商品「つけてみそかけてみそ」の新CMに、18年前に同商品のCMに出演していた元子役2人を起用。3月から東海3県で放映されており、“奇跡の再共演”として話題を呼んだ。実は同CMの実現は、同社の代表取締役社長・杉本達哉氏の「長年の願い」だったという。杉本社長がこのほど、よろず~ニュースの取材に応じ、再共演CMが実現するまでの経緯を明かした。
昨年、発売30周年を迎えた万能味噌ダレ「つけてみそかけてみそ」。30周年記念プロジェクトとして、過去のCM出演者の現在を応援したいという思いから、元子役で現在はアイドルグループ「LINKL PLANET」のメンバーとして活動する尾本侑樹奈(おもと・ゆきな)と、同じく元子役の杉浦花菜(すぎうら・はな)さんを18年ぶりに再起用。2人は2007年~12年頃まで放映されていた2代目CMに出演していた(現在は5代目が放映中)。
「つけてみ~そ~かけてみそ♪」という歌詞でおなじみのCMは、子役が代替わりしながら、約30年前から東海地方で放映され、今や同地域では圧倒的な認知度をほこる。ただ、同CMが生まれた経緯について杉本社長は「全然知らないんですよ、正直。当時は私の父(先代社長)がやっていて、僕は学生だったのでよく分からないんです」と苦笑いした。
初代CMは1990年代中頃から約10年間放映されたが、出演子役との契約の関係上、変更を余儀なくされ、新たにCMを作ることに。この時、すでに現職に就いていた杉本社長によれば、当初は初代CMに出演した元子役に再びオファーし、大人になったバージョンを制作しようとしたが「初代の子が見つからなくて…」と断念。そこで新たに子役2人を起用した2代目CMを制作した。このCMに出演した子役が18年後、大人になって再共演することになる。
ふとした思いつきだった「大人になったバージョン」だが、なかなか動き出せないうちに、いつしか「長年の願い」にまで膨らんでいた。急展開を迎えたのは昨年の秋頃。中京テレビから同社に1つの情報が入った。それは、同局の番組で取り上げたアイドルグループ「LINKL PLANET」のメンバーの一人が子役時代に「つけてみそかけてみそ」のCMに出演していた、というもの。早速、番組の企画で杉本社長がライブにサプライズ訪問。「その場で『ずっと子役が大人になったバージョンがやりたかった』と盛り上がって、これは本気で動きたい」とすぐに広告代理店に持ちかけたという。
2代目CMに出演していた子役のもう一人、杉浦さんはすでに芸能活動を終了してから久しい状態で、捜索は困難を極めた。ところが「尾本さんのお母さんが杉浦さんのお母さんと普通にLINEでつながっていた」と、まさに灯台もと暗し。打診すると、前向きな返事があった。約20年温めた「長年の願い」だったが、昨年12月に本格的に動き出すやいなや、1月後半に2人そろって出演を快諾、2月に撮影という、すさまじいスピード感で進んだ。
これまでCMの撮影現場にはほぼ確実に足を運んできた杉本社長。撮影当日、当時を思い起こしながら「すごいなぁと。2人ともいきなりなのに、息が合っていて」と感慨深く見守ったという。公式YouTubeで公開されたWEB版CMでは2人が当時を回想。尾本は「私が7歳、花菜ちゃんが6歳の時で。あれから18年たって、またこうしてCMに戻ってくることができてうれしいです」と感慨。杉浦さんも「(オファーの)お電話いただいた時はすごく驚いて、まさかこんな日が来るなんて」と喜んだ。また、杉本社長によれば、広告代理店の粋な計らいで、監督やカメラマンも当時のメンバーが集結。再結成したのは演者だけではなかったことを明かした。
ネットでは「胸熱過ぎる」「これはエモいですね」「すっかり大きくなって素敵な大人の女性になられましたね」「2人ともかわいい」など反響多数。杉本社長は「YouTubeのコメントを見ていると『あの小さかった子が大きくなったよね』『私たちの娘だよね』とか、そういう声を見ると、親しんでいただいているんだなと」と、東海地方を中心に根付いたCMであることを改めて実感。大衆に根付き始めた時期は「(CMの放映開始から)10年くらい経ってからじゃないですかね。もちろん商品自体の知名度もそれくらいから定着してきたんですけど」と、2000年代中頃であったと振り返る。ちょうどその時期、「つけてみそかけてみそ」は低迷から脱しようともがいていた時期でもあった。
1994年の発売から順調な売り上げを見せていたが、他社商品の台頭もあって徐々に低迷。「スーパーの棚替えで、ライバル会社さんとうちの商品が並んでいて、バイヤーさんが『1個でいいよね』と、うちの商品を外しかけて、営業と2人で土下座してお願いしたくらい頭打ちになっていて」と今だから言える苦しい時期を過ごした。
何かを変えようと、当時の「愛・地球博」(2005年日本国際博覧会)にライセンスを申し込み、公式キャラ「モリゾー」と「キッコロ」をパッケージに付けた。それ相応の初期費用がかかるものだったが、杉本社長の独断で決行。「愛・地球博」の盛り上がりとともに売り上げ効果が表れた。加えて、同時期に注目され始めた「名古屋メシ」の代表格としてメディアに取り上げられ、CMの定着も相まって、急激に売り上げを伸ばした。それ以降、現在にいたるまでの約20年間、売り上げは「基本的にずっと右肩上がり」と好調。同社内で2~3番手の商品だったが、今やダントツ1番の看板商品として不動の地位を確立している。
CM開始から約30年、子役の代替わりのたびに少しずつリニューアルしつつ「子役が出演する」という基本的なスタイルは守り続けている。「これは変えられないなと。女の子2人のCMイメージが付いているので、むしろ変えない方が良くて、少しずつリニューアルをかけた方が皆さんがずーっとイメージできるんじゃないかと思って、あえて変えてないです」と明かした。続けて「どちらかというと、CMは潜在的なファンを作っていくことを目的にしているので、そのCM自体で売り上げがいくら上がったということよりも、数年先の売り上げを作ってくれるファンを頑張って作るためにやっている」と話した。さすがに気が早すぎるが、再共演CMの展望について聞くと「まだ考えてないですね(笑)」としつつ、「子役さんたちが何年か経っても、活動を続けていたら、考えてもいいのかな」と先を見据えていた。
なお、今回の再結成CMは来年の3月中旬頃まで、1年間限定で放映される予定だという。