先日「新入社員が挨拶もそこそこに、私用のスマホをデスクにあるコンセントで充電する」との声をネットで目にした。たしかにスマホの充電切れは避けたい状況でもあるし、少しでも電気代を節約したいという思いもあるからかもしれない。
とはいえ、会社の許可なく私用のスマホを充電して問題はないのだろうか。これが上司にバレてしまったら、何かしらのペナルティに問われるのではないか。この疑問について、まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー会社の電源での私用充電は許されますか?
大前提として、会社の電源を私用目的で利用することが許されるか否かは、個々の会社のルールによります。大きく分けると、許可・黙認・禁止の3パターンに分かれるでしょう。
明確に禁止している会社で私用の充電を行っていた場合は、もちろん何かしらのペナルティが課せられると考えます。
ーどのようなペナルティが考えられますか?
日本の刑法では、「電気は、財物とみなす」(刑法第245条)とされています。会社のコンセントから供給される電気は、当然ながら会社が管理・占有する「財物」であるわけですから、従業員が会社の許可なく私用スマホの充電のためにこれを利用する行為は、窃盗罪の対象となりえます。
会社内の例ではありませんが、過去には無断でコンビニエンスストアのコンセントを使って充電していた中学生が書類送検されたという事例もあります。ただ会社内で起こった場合は、よほど悪質でなければ刑事事件として立件されることは少ないでしょう。
ー刑事罰以外に考えられるペナルティはありますか
刑事罰に問われる可能性が低いとしても、会社との雇用契約という点で考えると、懲戒処分が下される場合はあるでしょう。就業規則には、「会社の施設、物品等を私的な目的で利用してはならない」といった服務規律に関する規定が設けられていることが多く、新入社員の行為はこの服務規律に違反する可能性が高いと考えます。
スマホの充電という行為のみをもって、いきなり懲戒解雇というのは考えにくいですが、始末書の提出などは求められるでしょう。もし、上司や会社からの指導に反して、充電を繰り返した場合、減給や出勤停止といった重い処分が課せられる可能性もあります。
近年では企業のコンプライアンス意識が高まっていることもあり、私用のスマホ利用についても厳しくなっています。そもそも持ち込んでる時点で違反となる場合もあるでしょう。会社のルールに従い、適切な利用を心がけましょう。
●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。