〝バカ映画の巨匠〟と称される河崎実監督(66)の新作「サイボーグ一心太助」が12日から神戸での上映をはじめ、今春も各地で公開される。河崎作品の常連で神戸市在住の俳優・堀内正美(75)は今作で主人公をサイボーグとして蘇生させる天才科学者を熱演。地元での劇場初公開を前に、河崎作品との関わりやその魅力を振り返った。
堀内は1974年度のNHK連続テレビ小説「鳩子の海」で注目され、筒井康隆原作で今も根強いファンがいるNHK少年ドラマシリーズ「七瀬ふたたび」(79年)、勝新太郎主演・監督回で怪演した日本テレビ系ドラマ「警視-K」(80年)といった昭和期の作品から現在まで名脇役として活躍している。映画ではTBS系「ウルトラマン」など特撮ドラマの演出で知られる実相寺昭雄監督(2006年死去、享年69)作品など数多く出演してきた。
堀内が出演した河崎監督の映画作品は05年公開の「兜王ビートル」以来、「ヅラ刑事」(06年)、「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」(08年)、「髪がかり」(08年)、「地球防衛未亡人」(14年)、「大怪獣モノ」(16年)、「三大怪獣グルメ」(20年)に続き、今作が8本目。DVD作品では18年発売の「乳首ドリルの逆襲」にも出演しているが、最も印象深い出演作は「電エース ザ・ファイナル」(07年発売)だった。
「『電エース~』に出演した時、ロケ現場で手渡された衣装はゴールドの全身総タイツ…。『なるほど、ボクはこれを身にまとい、コミカルな芝居をすればいいんだな!』と、コミカルな芝居をしたら、河崎監督から『堀内さん、マジメにやってください!」の一言が…。僕は『?』。すると河崎監督が『堀内さんは普段通り、マジメな芝居をしてください!!おふざけはおふざけ俳優さんにやってもらいます。堀内さんがこのおバカな世界でマジメにやればやるほど面白くなるんです!実相寺昭雄監督の作品の中の堀内さんでお願いします』と言われました」
その時点で、実相寺監督の映画作品では「ウルトラQザ・ムービー 星の伝説」(90年)、「屋根裏の散歩者」(93年)、「D坂の殺人事件」(98年)、「姑獲鳥(うぶめ)の夏」(05年)が公開されていた。
堀内は「河崎監督と(脚本も担当した)漫画家の加藤礼次朗君とで、実相寺監督の思い出話をしている時に、『実相寺監督もいなくなっちゃったし…僕も俳優辞めようかな…』とつぶやいたら、河崎監督から『それじゃ、最後の作品として僕の世界に出てくれませんか!?』と台本を手渡された。それが『電エース~』だった」と証言した。
「河崎監督から『堀内さんの多羅尾伴内(※変装によって七変化する探偵の名前。映画では片岡千恵蔵や小林旭が演じた)を見てみたいんです!』と言われたのを覚えています。ただ、時間の都合で7役はできず、ホールの警備員、バーのマスター(声のみ)、掃除夫、専門学校の理事長、実は宇宙人の5役でした」
生まれ育った東京から84年に神戸移住。95年の阪神・淡路大震災で被災後は市民ボランティア・ネットワーク「がんばろう!!神戸」やNPO法人「阪神淡路大震災1.17希望の灯り」を立ち上げて被災者に寄り添い、その活動をまとめた初の著書「喪失、悲嘆、希望 阪神淡路大震災 その先に」(月待舎)を昨年11月に出版した。そうした社会活動で知られる半面、振り幅の広い俳優として〝おバカな役〟もマジメに演じてきた。
河崎監督作品としては、4日から公開されている最新作「松島トモ子 サメ遊戯」と共に、1月から全国順次公開中の新作「サイボーグ一心太助」もそのタイトル通りの破天荒なストーリー。 今後、神戸市の元町映画館(12~18日)、名古屋市のシネマスコーレ(4月19日~5月2日)、沖縄・那覇市の桜坂劇場(5月10日~)で上映される。
堀内は河崎作品の魅力について「ぶれない〝おバカ映画監督〟の作品には各所にオマージュがあふれている。今回は一心太助であり、大久保彦左衛門!監督からは『堀内さんは、意味ないセリフを言っても、それらしく聞こえるのがいいんですよ』とよく言われます」と明かし、「僕は大久保彦左衛門の末裔を演じています。さぁ〜、どんな彦左衛門になったか?神戸元町映画館でお会いしましょう‼︎」と〝地元凱旋〟に腕まくりした。