20世紀後半に話題にあがった環境問題といえばオゾン層の破壊だろう。世界的な問題として注目されていたものの、近頃ではほとんど話題にあがらない。環境問題に対する関心は高まっているにもかかわらず、いつしか忘れられたかのようなオゾン層は、今どうなっているのだろうか。気象庁の情報をもとにレポートする。
オゾン層について注目されなくなってから久しい。実際に、「オゾン層の問題ってどうなったの」「オゾン層は無くなったんじゃないの?」という声も見られるほどだ。
オゾン層とは、酸素原子が3つ結合したオゾンが多く存在する大気の層である。地表から約10〜50キロメートルの成層圏に位置しており、太陽光に含まれる有害な紫外線を吸収して地球上の生命を守っている。もしオゾン層がなければ、生物は紫外線の被害を受けてしまい皮膚がんや白内障などの健康被害が増加する可能性が示唆されている。
1970年代から1980年代には、フロンなどの化学物質によるオゾン層の破壊が問題となった。フロンは冷蔵庫やエアコンの冷媒として広く使用されており、普及が進むにつれてオゾン層に影響を及ぼしていた。特に南極上空では「オゾンホール」と呼ばれる現象が発生していた。
オゾン層の破壊に対処するために世界的な活動が始まる。1987年には「モントリオール議定書」が採択され、オゾン層を破壊する物質の生産や消費を段階的に削減することを目指した。この取り組みによりフロン類の使用が規制され、現在では代替フロンやノンフロン製品が使用されている。
これらの取り組みの成果もあって、現在、オゾン層は回復傾向にある。南極上空のオゾンホールの年最大面積は、2000年前後をピークに減少傾向にある。モントリオール議定書の成功は、今の環境問題にも応用できる可能性があるのではないだろうか。
回復傾向にあるといえ、気象庁のサイトには「クロロフルオロカーボン類などから生じた塩素・臭素によるオゾン層破壊が、ほぼ全世界で生じています。」と掲載されています。完全に問題が解決されたわけでない点には気を付けなければならない。
オゾン層の破壊問題は、世界的な協力と技術革新によって改善されつつある。環境問題に対する人間の努力が実を結ぶ例として、未来への前向きなメッセージを見せてくれているといえるだろう。
世界的な協力によって、現在抱えている環境問題は解決するのだろうか。オゾン層の破壊のように、数十年後には「環境問題とは何だったのだろう」といわれる未来があるかもしれない。