近年、少子高齢化の進行とともに「地域医療崩壊」が危惧されている。その要因の一つとして挙げられるのが「地域偏在」。医業承継M&A支援サービスを提供する株式会社エムステージマネジメントソリューションズこのほど、医師470人を対象に行った「医師の地域偏在」に関するアンケート結果を発表した。
これまでに医師の地域偏在を感じた経験について、「何度かある」は47.2%、「頻繁にある」は29.8%となり、77.0%が医師の地域偏在を感じた経験があるという結果となった。具体的な内容として「地方で受診先が限られていた、結果、かなり遠方まで通院」(50代/一般内科[訪問診療]/勤務医[民間病院])、「婦人科や小児科の先生が少なく、内科で対応してほしいといわれることもある」(40代/呼吸器内科/開業医)、「特定の診療科について、紹介先が見つからないことがある」(40代/消化器内科/開業医)などがあった。
地方勤務に対する関心として、「ある程度関心がある」が30.4%、「具体的に検討している」が5.1%で、35.5%の医師が地方で勤務することに関心があると回答した。地方勤務に関心がある理由について「年収や待遇が向上しそう」(67人)が最も多く、「プライベートの時間を確保しやすそう」(62人)、「地域医療に貢献したい」(59人)が続いた。地方で勤務する場合の働き方のイメージとして、「勤務医」(125人)が最も多く、「非常勤医(フリーランス)」(59人)、「開業(第三者等からの承継も含む)」(34人)となった。
財務省が提言する「地域別の診療報酬制度」が導入された場合の、医師の地域偏在解消への効果に対する考えについて、「非常に効果がある」は7.9%、「ある程度は効果がある」が45.7%と、半数以上の医師が効果があると考えている。
「ある」と回答した理由として「地域別の診療報酬制度があれば医師のいない地域の医師の給与が上がり、そこに医師が移動すると考えられるから」(60代/一般内科/勤務医[民間病院])、「地域ごとに細かく、頻度的にも数年ごとなど細かく設定を見直せば、ある程度効果は出てきそう」(30代/精神科/勤務医[診療所・クリニック])などが挙げられた。
一方、「ない」と回答した理由では「郊外の病院経営には役立つかもしれないが、それが医師の人件費に充てられるかは分からないし、労働環境的にも常勤医の確保が難しいのは変わらないだろうと考える」(40代/呼吸器内科/勤務医[健診施設や老健など])、「結局は医師がどこに住みたいか次第で、報酬の微々たる増加はあまり影響がないのではないか」(40代/総合診療科/勤務医[非常勤のみ、フリーランス])などがあった。