1970年代後半に大ブームを巻き起こした女性デュオ「ピンク・レディー」の未唯mieが13日、シングル盤のB面曲やアルバム収録曲を奇想天外なアレンジで再構築し、総勢20人以上のビッグバンドで演奏する公演「〈裏〉"Pink Lady Night" 2024」を東京・目黒のライブハウス「BLUES ALLEY JAPAN」で開催する。A面のヒット曲ではなく、知る人ぞ知る〝隠れたB面曲〟が令和の夏によみがえる。
未唯mieは2010年から正月恒例の公演「新春“Pink Lady Night”」を開催し、今年で15年目を迎えた。パーカッション・仙波清彦、キーボード・久米大作、ギター・白井良明、ベース・バカボン鈴木、トロンボーン・村田陽一らの一流ミュージシャン、邦楽や世界各国の打楽器奏者の演奏と共に、「ペッパー警部」「渚のシンドバット」「UFO」など、ピンク・レディーのヒット曲を大胆な編曲で歌い上げてきた。
その〝裏バージョン〟として、昨年8月に「〈裏〉"Pink Lady Night"」を初演。好評を博し、アンコール公演として今夏も開催される。
そもそも「B面」とは何か。音楽配信が主流になった今、特に若い世代にはピンとこないかもしれない。アナログ・レコードのシングル盤でヒットを狙ったタイトル曲がA面、その裏がB面。ランク的には「Aより〝下〟」と見られがちで、ラジオ番組などでかかる機会も少なかった。だが、その中に、遊び心のある面白い曲、後世に残る傑作も潜んでいた。なお、表面&裏面という概念がなくなったCDシングルでは「カップリング曲」と称された。
では、裏ピンク・レディーのレパートリーはどのような曲か。前回のセットリストを紹介しよう。(1~12はB面曲、カッコ内は発売年とA面曲)
(1)「パイプの怪人」(77年「カルメン,77」)
(2)「ババイヤ軍団」(77年「渚のシンドバッド」)
(3)「乾杯お嬢さん」(76年「ペッパー警部」)
(4)「アクセサリー」(78年「サウスポー」)
(5)「ザ・忠臣蔵 '80」(80年「世界英雄史」)
(6)「逃げろお嬢さん」(77年「ウォンテッド」)
(7)「レディーX」(77年「UFO」)
(8)「事件が起きたらベルが鳴る」(79年「ジパング」)
(9)「スーパーモンキー孫悟空」(78年「透明人間」)
(10)「キャッチ・リップ」(78年「モンスター」)
(11)「ピンクの林檎」(76年「S・O・S」)
(12)「ドラゴン」(77年「カメレオン・アーミー」)
~アンコール~
(13)「百発百中」(78年、アルバム「星から来た二人」収録曲)
「乾杯お嬢さん」はデビュー曲のB面だが、当時としては奇抜過ぎた「ペッパー警部」ではなく、こちらをA面にする案があったという伝説もある。担当した久米は、アレンジャーの座談会を収録したYouTubeの中で、「そのタイトルから昔の日本映画を連想した」という趣旨をコメント。実際、原節子と佐野周二(関口宏の父)が共演した「お嬢さん乾杯!」(1949年公開、木下恵介監督)という松竹映画もあった。久米は「(作詞家)阿久悠先生の言葉の力」に乗って編曲したという。
「スーパーモンキー孫悟空」はTBS系「飛べ!孫悟空」(ドリフターズによる人形劇)の主題曲。白井は「最初に思い浮かんだのはスパイダース。それから、ドアーズ。後は『テキーラ』みたいなラテンの要素も…」と編曲のイメージを明かした。
「キャッチ・リップ」は「宝石箱」(商品名)というアイスクリームのCM曲。村田は「ファンクぽい曲。ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)のコードや、ビッグバンドのスイングジャズぽい要素」を加味したという。
「百発百中」はピンク・レディーの出演番組曲やCMソングで構成したアルバムからの1曲で、日本テレビ系バラエテイー番組「NTVザ・ヒット!ピンク百発百中!」のテーマ曲だった。アレンジしたバカボンは「早いツービート」を取り入れたという。
未唯mieは手練れの音楽家たちによる今企画の作業について「真剣に遊ぶ」という姿勢を指摘。「それはミュージシャンの腕がないと成り立たない。みなさん素晴らしいので、何回でも聞いていただきたい。今後も続けていきたいです」と意欲を示した。