「ツユクサナツコの一生」益田ミリ氏 ほんわかと笑い呼ぶ「自分が描く主人公に似ている」手塚治虫文化賞

山本 鋼平 山本 鋼平
益田ミリ「ツユクサナツコの一生」(新潮社)の書影
益田ミリ「ツユクサナツコの一生」(新潮社)の書影

【益田ミリ氏あいさつ】

デビューをしてまもない頃、将来、何か賞をもらうことになったら、人前でスピーチがあるかもしれないと心配になり、スピーチ教室に申し込んだことがあります。説明会に行くと、毎週1分間スピーチがあると言われ、説明会で挫折しました。こういうところは自分が描く漫画の主人公たちに似ている気がします。

子供の頃は空想ばかりしていました。空想の私は勉強ができ、ドッジボールが得意な、私がなりたい女の子そのものでした。私はそんな空想の自分を、いつも絵に描いていました。

「リボンの騎士」のサファイヤ姫もまた、私の憧れでした。私も空想の世界で、たくさんの冒険をしていました。学校ではドッジボールも逃げ回るばかりでしたが、漫画を描いているときは、深いところにある自分だけの世界に没頭することができました。今でも原稿に向かっている時、子供時代に潜っていた、あの楽しい場所を思い出すことがあります。

この度短編賞をいただいた「ツユクサナツコの一生」は、漫画家を目指す若者の物語です。主人公のセリフに「自分が好きやと思うことは、一生死ぬまで自分だけのもんや」というものがあります。私も好きなことを続けていられる今に感謝し、これからも描き続けていきたいと思います。この度はありがとうございました。

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