歌手のポプラ(74)が12日、都内で開催したステージで、約40年ぶりにアニメ「夢戦士ウイングマン」にフィーチャーしたセットリストを展開。主題歌「異次元ストーリー」、挿入歌「Bad Dreaming」「私のPretty Boy」「忘れない」を熱唱した。
シャンソン、ロック、ミュージカル、ドラマ主題歌にアニソン…多彩な歩みを投影させた17曲のステージを終えたポプラは「ライブはいろんなことが起こるのでスリリングでした」と振り返りつつ、「告知はホームページだけでしたが『ウイングマン』のファンの方が何人か来てくれて、『良かった』と言ってもらえたことが嬉しかった。私のライブは初めてという方が喜んでくれると、また頑張ろうという気持ちになりますね」と感謝を口にした。
1984年に放送されたアニメ。オーディションで歌唱が決まり、放送時は原作者の桂正和氏と対談企画を行った。「まだ22歳だというのに億万長者と知って驚きました」と漫画がヒットすることの大きさに衝撃を覚えたという。ただし、公のステージで歌ったのは東京と大阪で計2回、コロムビア主催のコンサートだけだったという。
「コロムビアに所属していた訳ではなく、ミュージカルに取り組んでいたので、私を呼びづらかったのかもしれません。ただ、アニメファンの熱気はすごかったですね。『SHOW ME YOUR SPACE』(アニメ「OKAWARI-BOY スターザンS』主題歌)も歌いましたが、驚くくらいウケました。共演した水木一郎さんには歌を褒めて頂いて友人にもなりました」
アニメの仕事は嫌いではなかったが「私は営業が苦手で、うまく立ち回ることができませんでした」と、日本の芸能界は居心地が悪かった。渡米を繰り返し、一層ミュージカルに傾倒していった。やがて、ステージでは英語詞のみを歌うと決め、アニソンを含む持ち歌を封印してしまった。
転機は2006年。親交が深く、テレビの旅番組でも共演した女優・岸田今日子さんが76歳で死去。岸田さんからは「日本語詞も歌わないと」と度々助言を受けていたことから、日本語曲を解禁した。この日は戦争を美化するとして大規模な反対運動が起こった劇場版アニメ「FUTURE WAR 198X年」(1982年公開)の主題歌「愛ゆえに哀しく」と「愛のソナタ」、テレビドラマ「Gメン'75」のエンディングテーマ「遥かなる旅路」、アンコールではディズニー映画から「美女と野獣」を展開。いずれもその歌唱力が評価された持ち歌だ。
「ウイングマン」の曲は06年以降、時折ステージで披露してきたが、4曲をまとめて歌うのは水木さんと共演したステージ以来という。「水木一郎さん、一城みゆ希さんが亡くなって、私もいつまで続けられるか分からないと思いました」と、その理由を語った。80年代にミュージカルで共演して以来の仲だった声優・歌手の一城さんは昨年10月に76歳で、水木さんは22年12月に74歳で死去した。
「異次元ストーリー」はノリノリで、「忘れない」はしっとりと歌い上げた。「竜真知子さんの詞は今も大好きです。『忘れない』は水木さんや一城さんのこともあって、当時よりも歌詞を深く理解するようになったように思います」と振り返った。
今回のステージで少し心残りなのが、当時のアニメファンに告知をし切れなかったこと。「当時のアニメファンの熱気はすごかったので、『ウイングマン』のファンの方にももっと多く聴いてもらいたかったですね」。懐かしのアニソンに関するイベント、テレビ・ラジオ番組は多数あるが一度も参加したことがないというポプラ。出演依頼を受けたことはあるが、タイミングが合わず断った。「アニメファンの方に喜んでもらえるなら、ぜひ歌いたい。そんな機会ができればありがたいですね」。1970年のデビューから54年。新たな目標を胸に、情熱を燃やし続ける。
◆ポプラ公演セットリスト 4月12日、築地・汐留 BLUE MOOD(ブルームード)=ポプラ(vocal)、堺敦生(piano)、阿部梓穂(percussion)、guest:RYU(guitar)
▶What now my love、I love Paris、C’est si bon(セシボン)、La vie en rose(ラビアンローズ)、愛ゆえに哀しく(東映アニメ映画 198X年より)、愛のソナタ(東映アニメ映画 198X年より)、わたしが一番きれいだったとき、ピープルのテーマ(中川久美作品 Musical show “ピープル”より)、テレビアニメ“ウイングマン”よりBad Dreaming、私のPretty Boy、忘れない、異次元ストーリー、Super star、We will rock you~I was born to love you、遙かなる旅路(Gメン75 より)、We are not alone、美女と野獣