あるアンケート(株式会社エムステージ)で、25%もの医師が災害医療に関わりたくないと思っているとの結果を目にしました。元日に能登半島地震があり、現在も群発地震が起こっている地域があります。近未来には、南海トラフ地震が高確率でくるとも予測されています。「関わりたくない」という医師の思いとは別に、実際の災害時には、医師、看護師、医療従事者が一丸となり患者さんの治療に当たらなければならないと、私は考えています。
その場合、現場で「働き方改革」なんてことは、言ってられないはずです。しかしながら、今の医療体制で大規模地震に対応できるのか?と考えると、正直、不安にもなります。
私は関西出身なのですが、阪神大震災を経験していません。しかし、地下鉄サリン事件の際は、東京の三井記念病院で勤務しており、多くの患者が三井記念病院に運ばれてきて、その際に治療に携わりました。病院の中はパニック状態となり、日常業務はできませんでした。
手術はすべて中止、退院ができそうな患者さんはすべて帰宅して頂きました。1階の待合は、サリンの患者で溢れかえり阿鼻叫喚という言葉がぴったりでした。毒物とは状況の違いがあるものの、大きな地震による被災者を地域の中核病院が受け入れる状況があれば、人数の規模などから考えてさらに厳しい状況になるのでは、と予測します。
重度の外傷の治療には、多くの人手が必要です。もちろん、外科、整形外科、脳外科、麻酔科の総動員です。南海トラフは、高確率で起きるとされている地震。地域のそれぞれの病院に、個々に応じた受け入れ体制を完備して頂く必要があると思います。
受け入れられる人数、どういった状態の患者さん受け入れることができるのかなど、具体的にシミュレーションする必要があると思います。もちろん、それぞれの医療機関である程度は検討されているとは思いますし、訓練もされているはずですが、未曾有の事態が起こることに想像力を働かせた“ガチンコ”の備えが必要です。ゆるい気構えで対応できるものではないと思います。
インフラも破壊され、日常生活も普通にできなくなり、普段必要な内服もできなくなることが予想されます。被災され、負傷された患者さんだけでなく、普段から治療が必要な患者さんへの対応も考えておかないと、被害は広がるばかりでしょう。
地震だけではなく、新たな感染症のパンデミックが起こる可能性も否定できません。さまざまな備えを施行すると、相当な労力と経費がかかるかもしれませんが、それをちゃんとやった分、被害は軽減されるはずです。税金を大事につかってほしいと切に願います。ある意味、差し迫った災害が想定される中、真剣に災害医療に関して考える時期なのでは、ないでしょうか。