LINEなどのやりとりで、相手からの〝返し〟の文末が「句点」で終わっていると、「怒られているのではないか?」と不安感を抱く若者がいるという。「ハラスメントを受けた」と感じる若者世代から、「マルハラ」という言葉が生まれている。昨今、「●●ハラスメント」、略して「●●ハラ」というワードが大量生産されている中、この新種の「マルハラ」に象徴される、年長者にとっては理解しがたい世代間ギャップにどう対応すればいいのか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対応策を提言した。
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【今回のピンチ】
LINEで若い部下から業務連絡があり、「わかりました。」と返信。その後、顔を合わせたときに「怒ってますか?」と聞いてきた。どうやら文末の句点が怖かったらしい……。
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「マルハラ」という言葉が話題になっています。LINEなどのやり取りで、文末に句点(マル)を付けると、一部の若者は相手が怒っている(ハラスメントを受けた)と感じるとか。
中高年世代としては、文章の最後には句点を付けるのが当然であり、それがマイナスの意味を持ってしまうという指摘は、大きな驚きであり極めてショックでした。
何の悪気も他意もなくマルを付けていた側としては、「おいおい、勘弁してくれよ」と叫びたくなります。かといって、若者には若者の感じ方や暗黙のルールがあるわけなので、一方的に責めるのも筋違い。大切なのは、それぞれの常識をどうすり合わせるかです。
さて、こんなふうに「マル」に関するジェネレーションギャップを突き付けられたら、どう対応すればいいのか。
本音としては「日本語では文末にはマルを付けるのが常識だ。勝手な解釈で不安になってるんじゃない。自分の感覚がすべてだと思うな!」ぐらいは言いたいところです。
ただ、LINEのマルが心配になるぐらい「繊細で打たれ弱いタイプ」に対して、ここまでストレートな叱責は危険。ますます脅えて深い溝ができるばかりか、「パワハラを受けた」と騒ぎだす可能性もあります。
ここは、世の中で「マルハラ」が話題になっていることを利用させてもらいましょう。一瞬「えっ?」と怪訝(けげん)な顔をしたあとで、「ああ、そうかそうか。これが話題のアレか」と納得した様子でつぶやきます。続けて、
「マルを付けたら怒ってるっていうのは、誤解だから気にしないで。俺たちの感覚だと、文末にはマルを付けないと気持ち悪いんだよね。これからも付けるけど、怒ってるとかそういうんじゃ全然ないから」と、こちらのスタンスをきっちり説明しましょう。
マルハラ的な誤解が生じる原因は、ほぼ確実にコミュニケーション不足です。伝えるべきことを伝える手間を省いて「じゃあ今後はマルを付けないようにしよう」と自粛しても、本質的な解決にはなりません。またそのうちに、別の誤解が生まれるだけです。
ちゃんと説明したのに、相手が「こちらは怖いと感じるんだから、付けないでほしい」と思ったとしたら、それはあまりにも自分勝手。知ったことではないし、いわば部下による「マルハラハラスメント」です。
この部下が、ひとりで悶々と不安を膨らませるのではなく、直接「怒ってますか?」と聞いてくれたのは、むしろありがたかったと言えるでしょう。ひとしきり説明したあとで、「でも、聞いてくれてよかったよ。こうして誤解を解くことができたからね。どうもありがとう」とお礼を言えば、上司としての株を上げることができます。
そこで「こんなに話題になってるのに、何言ってんだ。情弱にもほどがある!」と、もっともな指摘をする必要はありません。言いたいのは山々でしょうけど。