韓国でも「原作者VS脚本家」攻防が勃発 視聴者を困惑させた〝脚色ドラマ〟 現在放送中の大河ドラマでも

椎 美雪 椎 美雪
「財閥家の末息子」は俳優陣の熱演は好評も原作の大幅な脚色で議論が巻き起こった(出典:JTBC)
「財閥家の末息子」は俳優陣の熱演は好評も原作の大幅な脚色で議論が巻き起こった(出典:JTBC)

 日本テレビで放送された連続ドラマ「セクシー田中さん」の脚本を巡り、原作者の芦原妃名子さんが「改変」されたと自身のSNSで公表。大きな議論が巻き起こると芦原さんは自身の書き込みを全て削除し、この世を去るという最悪の事態が発生した。

 この事件後、漫画家および脚本家のコメントが相次ぎ、出版界や放送界の体制が疑問視されるなど、問題の収束は見えていない。当時、韓国メディアでもこのニュースは大きく報じられ、韓国ドラマの事例も再照明されることとなった。

 韓国でも漫画や小説原作のドラマは人気を集め、制作数は増加の一途をたどっている。しかし、やはり脚色・編集の過程で原作者と脚本家・放送局の対立が起こり、駄作に転落した作品も多い。

 そんな中、韓国メディアのwikitreeが原作者と放送局が対立したドラマで、記憶に新しいドラマ2作を紹介している。

 まず1作目が、22年11月より放送されたソン・ジュンギ主演作「財閥家の末息子」だ。本作はサンギョン(山景)作家の同名ウェブマンガが原作で、最高視聴率は26.9%を記録、非地上波ドラマ視聴率歴代2位にその名を連ねた。

 財閥グループ「スンヤン」のオーナーリスクを管理していた秘書、ユン・ヒョヌ(ソン・ジュンギ扮)が「スンヤン」創業者であるジン・ヤンチョル(イ・ソンミン扮)の末息子、ジン・ドジュンとして生まれ変わり、後継者争いを展開する内容が描かれた。イ・ソンミンとソン・ジュンギの熱演、ジン・ドジュンがライバルを次々と倒し、スンヤンの会長へ上り詰めるプロセスで見せるカタルシスが反響を呼んだ。

 しかし、最終回で事故が起きた。原作のコアコンセプトは〝未来知識を利用した回帰者が、お金を稼いで成功する〟というものだが、そこに焦点が当てられず、これまでのストーリーが全てユン・ヒョヌの夢だったという、まさかの〝夢オチ〟で結末を迎えたのだ。多くの視聴者が、この最終話に戸惑い「ジン・ドジュンになったユン・ヒョヌのこれまでの苦労が、何の意味もなくなってしまったのか」という反応を見せた。

 さらに原作者であるサンギョン作家が、この脚色について「放送を観て知った」ことが明らかになり、本作の脚本を担当したキム・テヒ作家が、元々原作を過度に脚色することで有名だったことや、盗作問題を起こした過去までが掘り起こされ、批判が殺到する事態となった。

 3月まで放送予定のKBS大河ドラマ「高麗契丹(コウライキッタン)戦争」もまた、原作者のキル・スンスと脚本家、監督との真実攻防が勃発。同作は、1009年から1019年までの高麗と契丹族のヨナラが衝突した麗遼戦争のうち、第2次、第3次戦争を背景にした物語で、問題が浮き彫りになったのは18話だという。

 劇中でヒョンジョン(キム・ドンジュン扮)は、自身の地方改革に反対したカン・ガムチャン(チョ・ジュジョン扮)と対立。カン・ガムチャンはキム・ウンブ(チョ・スンヨン扮)が、豪族たちの子孫を徴兵から逃したとして彼を弾劾したが、実際にヒョンジョンはこの事実を知りながら黙認していた。自身の意見が受け入れられない状況で、カン・ガムチャンは止まることなくヒョンジュンに主張し続けた。

 キム・ウンブの弾劾をめぐり対立が激化すると、ヒョンジュンはカン・ガムチャンに開京(開城府)を去るよう命じ、怒りを抑えきれずにカン・ガムチャンの首を絞めようとする姿が描かれた。さらに放送最後には、ヒョンジュンが自身の前に立ちはだかる馬車を避けようとして、落馬事故を起こす様子も。

 この放送を観た視聴者の多くが「ヒョンジュンが戦争に備えて改革を行うというプロセスを、説得力をもって描き出せていなかった」という評価を下す。また原作者であるキル・スンスも「原作は無視してもいいが、大河ドラマである以上、歴史は無視しないでほしい、その点が残念だった」と激しく批判した。

 すると「高麗契丹戦争」の脚本を手がけたイ・ジョンウ作家は「(ドラマは)高麗史をベースに、最初から再設計された物語」「原作をベースとしていない別の作品だ」と反発。しかしキル作家が「制作サイドから、アシスタントがやるような仕事を要求された」と暴露し、論争が続いている。

 最終的に放送局のKBSは「旧正月に合わせて1週間、放送を休止し作品の完成度を高める」と発表し一時的に事態を収束させたが、世論を回復させることができるかは、現時点で未知数の状況だ。

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