松本零士「1000年女王」アニソンシンガー、40年ぶりに主題歌歌う!原大輔が語る思い出と決意

山本 鋼平 山本 鋼平
本名の高梨雅樹でも活躍した歌手の原大輔=都内
本名の高梨雅樹でも活躍した歌手の原大輔=都内

 また、アニメソングの成績も同時期にテレビ放送された「Dr.スランプ アラレちゃん」に水を開けられた。同じフジテレビながら、水森亜土による主題歌「ワイワイワールド」は日本コロムビアから発売されていた。「鹿内社長が『グループ総力を挙げてキャニオンもアニメに力を入れていく』と話していました。けれど、『アラレちゃん』に焦っているのは分かりました。ものすごい人気でしたから」と当時を思い返した。以降もNHKアニメ「子鹿物語」のエンディングテーマ「空から星が降りてくる」、「王家の紋章」イメージアルバムの「キングオブキングス〜メンフィスのテーマ」を歌ったが、再び葛藤が始まったという。

 「僕は笑顔で歌うことができないから悩んでいました。他の歌手は楽しそうに歌っているのにね。当時は『アラレちゃん』と一緒のステージが多くて、明るい声優さんのノリにもついていけない、地味な自分を感じていました。他の歌手のように、キーンと張ったストレートできれいな声ではなく、艶やかなヨーロピアンロック系が好きな自分は、オブラートに包んだような声。向いていない、と思い始めていました」

 そんな頃、飲み屋の弾き語りで「秋冬」を耳にした。「いい曲だな」と関心を持った。同曲は早世した中山丈二の遺作であることなどを知り、一層強く興味を持った。デモテープを他のレコード会社に持ち込むと、リリースに前向きな評価だった。ポニーキャニオンに連絡し、所属契約の解除を申し出た。

 「キャニオンの担当ディレクターが『そうだね。高梨くんは歌謡曲の方がいいかもね』と言ってくれました。当時は契約がしっかりしていて、他社から半年間出してはいけない縛りがありましたが、それも解除してくれました。すぐにレコーディングして、原大輔の名前でデビューできました」

 こうして、レイラ、江夏一樹、高梨雅樹に続く4回目のデビューを果たした原大輔。高田みづえら7人が編曲者などを変え、競作の形でシングル「秋冬」がリリースされた。高田は同曲を、1984年のNHK紅白歌合戦で披露し、翌年に大相撲の大関・若島津と結婚して芸能界を引退した。原さんのシングル「秋冬」もヒットし、歌謡曲の足場を固め、現在に至る。

 来年1月、久々に「コスモス・ドリーム」を披露する。イベントでは五條真由美、新井正人、ひろえ純と共演。死去、引退等でオリジナル歌手が不在のアニメ名曲をカバーする企画も織り込まれる。「何十年浸っていた歌謡曲とは違う空気に浸れるのが、自分自身楽しみです」と前を向いた。原さんはヒデ夕樹が歌った「GO! GO! トリトン」(「海のトリトン」)、井上大輔の「哀・戦士」(映画「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編」)をカバーする予定だ。

 原さんは「いまだに『コスモス・ドリーム』を知ってくださる方がいる。アニメは何十年たっても息が長いですね。歌うことが決まった当時は、これで売れると有頂天になりました。そんなに売れなかったんですけどね。それでもジャンルを分けず、たくさんの経験をしてきたから今の原大輔がある。50年近くやってきて、アニメ歌手は3年だけ。それでも、いろんな自分がいたなあ、と面白いですよね」としみじみ。〝アニメ歌手・高梨雅樹〟復活に向けて、優しい笑顔で決意を語った。

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