7月に強力な「太陽フレア」が観測されたという米航空宇宙局(NASA)の発表が報じられた。この太陽フレアについては著名な予言者も言及しているという。ジャーナリストの深月ユリア氏が、その予言の内容を紹介し、専門家に科学的な見地から意見を聞いた。
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ロシアのニュースサイト「AIF.RU(アイフル)」(6月29日配信)で「女ノストラダムス」とも呼ばれているブルガリアの国民的予言者、ババ・ヴァンガの予言が紹介された。
ババ・ヴァンガは12歳の時に竜巻にのみ込まれ、視力を失った代わりに高度な予知能力を得たという。一般人には目に見えない「不思議な生き物」が、彼女に未来の世界で起こる出来事を予知夢として見せていたという。
彼女の予言は「的中率が85%もある」とされ、多くの権力者たちが彼女の元を訪れた。その中には、オカルト好きのアドルフ・ヒトラーの姿もあったという。驚異の的中率から、彼女の予言は死後に国家機密に指定され、現在も一部しか公表されていない。
さて、今回、紹介された ババ・ヴァンガの予言は「炎は太陽から来る。天変地異が起こる」
同サイトによると、この予言における「炎」とは巨大な太陽フレアに生じる太陽嵐を表しているという。太陽フレアとは、太陽活動が活発化している際に表面で発生する大規模な爆発現象であり、地球に到達すると通信障害を引き起こすことがある。さらに一部の研究者たちの間で「割れそうな岩盤に太陽フレアの爆発で放出された電気を帯びた粒子が影響し、大地震を誘発するのではないか」という仮説がある。
太陽フレア、磁気風、オーロラ活動など最新の宇宙天気情報を配信するサイト「宇宙天気予報」によると、昨今、太陽フレアの活動が活発化している。
このため、 ババ・ヴァンガは「太陽フレアによる地球規模の大地震を予言しているのでは」という噂がささやかれている。
しかし、筆者が NPO法人「国際地震予知研究会」の委託を受けて地震情報の配信・観測を行っている「株式会社 麒麟地震研究所」(三重県伊勢市)に取材したところ、太陽フレアの地震との関連性に科学的な根拠はないという。
同研究所の担当者は「大気重力波やノイズ(音の周波数)を機械で計測して地震予測を行っていますが、太陽フレアが影響を与えているというような現象は観測できていません。科学的な根拠はありません。ただし、太陽フレアは通信・磁気に影響を与えるため、観測機には影響があるかもしれません」と指摘した。
太陽フレアが観測機に影響を与えれば、あたかも太陽フレアが地震活動を誘発しているように見えることがあるのかもしれない。
地震を誘発することはないにしても、総務省は昨年より太陽フレア対策に本腰を入れ始めた。2022年6月に総務省の「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」が公表した報告書には、「100年に1回の頻度で起きるとされる大規模な太陽フレアが2週間連続で発生する」という「最悪シナリオ」をシミュレーションしていて、通信や放送は2週間不通となるという。「天変地異」は起きないにしても、生活には大きな支障が出てしまうだろう。