「鬼滅の刃」「Fate」主題歌手がける〝レジェンド音楽家〟梶浦由記 こだわり明かす「まず研究します」

松田 和城 松田 和城
自身初の歌詞集「空色の椅子」出版記念イベントに出席した梶浦由記
自身初の歌詞集「空色の椅子」出版記念イベントに出席した梶浦由記

 アニメ映画「鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎」の作詞作曲などを手がけた音楽家・梶浦由記が29日、都内で、活動30周年を記念した歌詞集「空色の椅子」(飛鳥新社)の出版記念イベントに出席した。

 「鬼滅の刃」「Fate」シリーズ、「魔法少女まどか☆マギカ」「機動戦士ガンダムSEED」など数々の人気作の楽曲を手がけてきた梶浦初の著書。同書では30年間にわたる、全230編の詞を収録した。

 これまでも度々、自伝のオファーがあったが断ってきた。梶浦は「私は音楽家ですし、文章を書くのがうまいわけではない。きっと私が100時間かけて本を書くなら100時間かけて音楽作った方がいいものが絶対できると思った」と説明。一方で、おもいを込めてきた歌詞には自信がある。「私が唯一、責任を持って世に送り出してきた言葉。それに関しては何も言い訳はできない。責任をもって書いてきたもので、その言葉なら本にしていくのにふさわしいと思った」と出版に至った経緯を明かした。

 シーンや登場人物の心情を音楽で巧みに表現する、”梶浦ワールド”と呼ばれる独特の世界観とメロディーで、アニメファンの心をつかんできた。アニメのタイアップ曲を手がけるには、原作の理解度も必要とされる。「作品にジャンプする心の準備の扉」と独特の表現で、オープニング曲に対するこだわりを明かした梶浦。「原作、脚本を時間の限り読み込みます。一体何を言葉にして何を音楽にすればこの作品のイントロにふさわしいか。ワクワクして作品にみんなが入り込むにはどんな言葉、音楽がふさわしいかをまず研究します」と話した。

 梶浦は原作がノベルゲームであるアニメ「Fate/stay night」関連の楽曲も多く手がけている。時間の関係上、実際にゲームを全てプレイできなかったため、シナリオ、脚本資料の”文字情報”を中心に作品をひも解いたという。17年から20年にかけて、3部作で公開された劇場版「Fate/stay night [Heaven`s Feel]」では、歌手・Aimerによる「花の唄」「I beg you」「春はゆく」の全主題歌などを担当。原作者・奈須きのこ氏からも全幅の信頼を寄せられている。「一番初めにお仕事させていただいた『空の境界』(原作・奈須きのこ)の時に、私が言うのもずうずうしいんですけど、かなり信頼関係を奈須さんと築けたかなと思っています。その時につくった音楽を気に入ってくださったので『Fate』はかなり任せていただけたんじゃないかな」と振り返った。

 活動30年目を迎えた〝レジェンド音楽家〟。若い音楽家にアドバイスを求められることも少なくないが、「若い方は若い方のやり方で音楽をやられているので、正直教えられることはそんなないんです」と謙遜した様子。一方で「30年やっても音楽は飽きない。ますます楽しくなっていくから安心して音楽を続けてください」と金言を送った。自身も、音楽家としての〝炎〟がますます燃え続けているようで、「あと30周年を目指して音楽を続けていければ」と抱負を語った。

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