若い世代を中心にシーシャ(水たばこ)の人気が高まっている。激戦区の東京・歌舞伎町に「新宿シーシャ倶楽部」が2023年2月、オープン。靖国通り沿いにあるドン・キホーテ新宿歌舞伎町店6階という好立地で、60坪約80席は都内最大級だ。新宿の絶景が一望できるシーシャバーのスタッフに、ブームの理由を聞いた。
CMO(チーフマーケティングオフィサー=最高マーケティング責任者)の小山竜央さん(40)は、コロナ禍以降第2次シーシャブームが到来していると教えてくれた。「日本においてのブームの一端というのは、やっぱり『体に悪くなさそう』っていうのがあります。だいたい1、2時間くらい吸うと、たばこ1本吸ったぐらいはニコチンがあるんですけど、世間のイメージはニコチンがないものだと」と説明する。
さらに「人肌恋しさというか、シーシャの吸い口って一説によると『おっぱい』をイメージしているらしいですよね。吸い口でチューチュー、それが好きだから。人の本質的なもの」と自説を展開した。
特に若い世代にシーシャが広まった背景として「こういうラウンジ系に座って、そこでまったりして、カフェよりはちょっとお高いけどその間のチル(くつろぐ、まったり過ごす)というか、時間を買うっていう概念。カフェだとおしゃべりメインじゃないですか。シーシャは空間と時間…時間を買っているという感じ」と話す。
客の8割は20代。そのうち女性が6割くらいだという。Z世代にシーシャが浸透する理由について「20代ってタイパ(タイムパフォーマンス=時間対効果)、時間効率追うじゃないですか。YouTube見るにしても倍速で見る、無駄な時間省いて。逆に言うと、人とのコミュニケーションにむちゃくちゃ時間使いたいんですよ。情報取得は倍速でやるけど、人との交流には逆に飢えちゃってる。そこにはものすごくお金をかけたいっていう欲求が高まっている。シーシャは時間買ってるんですよ」と分析した。
コミュニケーションツールとしても若者向き。「カフェだと会話がなくなったりしたら困るじゃないですか。でも、シーシャって会話なくなったら吸うっていう。ちょっと特別な空気感、ワンクッションできるっていうのがはやっている」という。
カスタム性も魅力のひとつだといい「Z世代って既製品が好きじゃない。シーシャっていろんな種類のフレーバーを自分の好みでミックス、カスタマイズできるっていう楽しみがある」と語る。
女性店員のひなのさん(36)は、組み合わせによって1000種類以上のフレーバーができるといい「自分の好きなものを探す楽しみがある。初めての人でも、店員が丁寧におすすめします!」と優しくささやく。シーシャバーはどことなく怖いイメージがあるが、同店共同オーナーのキム・ジェジュンさん(41)は「シーシャの店に行くと、スタッフがクールであまり優しくない。当店は接客が一番だと思ってますから、スタッフにも気軽に声を掛けられます」と初心者の緊張をほぐす。
ソファやテーブルもゆったり広く、大きな窓から広がる歌舞伎町交差点の風景が開放感を増す。WiFiや電源、充電器も完備。開店は午後2時で、打ち合わせやパソコン作業などで利用するサラリーマンも多いという。ひなのさんは「カフェは女性とかおばさんとかめっちゃおしゃべりしているけど、シーシャではあまりマシンガントークしている人はいないから…」と、騒音のストレスを感じることはない。
店は「近未来・ネオ東京・サイバーパンク」のコンセプトもうたう。店長のそうたさん(24)は「6月16日から、サブカルの大御所・米原康正氏にディレクションしてもらったアニメーションのアートの方の作品を2週間展示するアート×シーシャのイベントをする」と、サブカルチャーとシーシャを融合させたイベントを積極的に開いていく。
2人までシェア可能なシーシャが1台1800円。チャージは午後7時以降1100円(午後7時までは700円)で、アルコールは400円から。午後9時から終電時刻までが特ににぎわうという。
まだまだ知る人ぞ知る隠れ家的シーシャバー。共同オーナーの河辺雄次さん(41)は「値段が高くなく、おしゃれな場所でシーシャ吸いませんか」と呼びかける。新宿での過ごし方の選択肢として使えそうな店で、一度試して見る価値はありそうだ。