G・カブキの店が四半世紀の歴史に幕 年内閉店、11月に感謝祭開催 「ちゃんこ」と猪木さんの思い出も

北村 泰介 北村 泰介
閉店に向け、店の看板を前に残り半年の営業に意欲を示すザ・グレート・カブキ=東京・小石川の「BIG DADDY酒場 かぶき うぃず ふぁみりぃ」
閉店に向け、店の看板を前に残り半年の営業に意欲を示すザ・グレート・カブキ=東京・小石川の「BIG DADDY酒場 かぶき うぃず ふぁみりぃ」

 「東洋の神秘」の異名を持つ伝説のプロレスラー、ザ・グレート・カブキ(本名・米良明久)が四半世紀に渡って都内で営んできた居酒屋を年内で閉店することを公表した。今年9月で75歳になるカブキが、よろず~ニュースの取材に対し、現在の心境や、プロレス界の新弟子時代から約60年間も作り続けた「ちゃんこ」について、昨年10月に亡くなったアントニオ猪木さん(享年79)とのエピソードも交えて語った。

 東京・小石川にある居酒屋「BIG DADDY酒場 かぶき うぃず ふぁみりぃ」がカブキの〝主戦場〟だ。全国から多くのファンが訪れ、リング内外のエピソードやプロレリス談義に花を咲かせてきた。また、現役プロレスラーや往年の名選手らも来店し、そうしたサプライズもまたファンにとっては楽しみの一つでもあった。

 今月5日、同店の公式ツイッター(かぶきうぃずふぁみりぃ@thegreatkabuki9)やフェイスブックで年内の閉店を告知。同ツイッターでは「引退後、次のステップの居酒屋を始めて25年…更に次のステップへ進むため『かぶきうぃずふぁみりぃ』は今年いっぱいで幕引きすることにいたしました。詳細は後日ご報告とさせていただきます。閉店までにはまだすこーし時間ありますので皆さん遊びに来てくださいね!」という文面がアップされた。

 カブキと共に店を切り盛りする妻の米良安子さんは「閉店日はまだ確定していませんが、12月まで…ということで考えています。閉店は諸々の事情が重なって決断しました。一つは自宅をリフォームして、娘夫婦と一緒に生活するためという(家族の事情)。あとは、やはり(カブキの)体ですね。腰、首、膝。全部です。年齢的にしんどいですし、75で卒業して、『第三の人生』へ…ということですね。これから老後を生きるために、いま決断して次のステップに行こうということで区切りを付けました」と説明した。

 東京・飯田橋で18年、現在の小石川に移転して7年。看板を掲げて25年の節目だった。飯田橋の店舗では従業員だった元女子プロレスラーの元気美佐恵が独立して「居酒屋ねばーぎぶあっぷ。」を経営し、カブキと安子さんは二人三脚で小石川の店を営んできた。告知のタイミングについて、安子さんは「地方のお客さんがいらっしゃるので、半年くらい余裕をもって発表しました」と明かす。カウンター10席とテーブル3席。連日予約で埋まっているという。

 カブキは「プロレスファンの人が訪ねてくれるっていうのはうれしいですね。昔の話とか、いろんな話をしています。お客さんから『あの時はどうだったんですか?』と聞かれて、『あんまり昔のこと聞かれても、もう、ぼけてるから忘れちまったよ(笑)』なんて話もしながら…。ありがたいですね」と目を細める。

 名物メニューである「ちゃんこ」は「連獅子」(牛カレー味)、「赤い毒霧」(豚キムチ味)、そっぷ炊き(鶏だし醤油味)の3種類。新弟子だった15歳から「ちゃんこ番」をしていたカブキは、この料理に思い入れがある。そして、先輩の猪木さんにまつわる「ちゃんこの思い出」を当サイトに披露した。

 「(日本プロレス)に入ってすぐ、15歳でちゃんこ番をやらされましてね。先生(力道山)が亡くなられた翌年(1964年)のことです。豊登さん、芳の里さん、吉村道明さん…。(ジャイアント)馬場さんは米国に行っていて、猪木さんは合宿所の2階に住んでいました。僕がちゃんこ鍋を作ると、猪木さんは一等最初に2階から降りてくるんですよ。それで、食べ終わるのは一番最後なんです。一番最初に座って、一番最後まで黙々と食べていた。たぶん、歯のかみ合わせが悪かったのかもしれませんが、食べるのが遅かった。そんなことを思い出します」

 ちゃんこから時代の移り変わりも感じるという。

 「昔のちゃんこは水炊きばっかりだったのが、若い人が水炊きを食べなくなったんですよ。ポン酢を付けて食べなくなっちゃった。酸っぱい系がダメみたいです。(味の付いた)甘いのが好きみたいです。それから味付きのちゃんこを作るようになった。カレー、キムチ、そっぷ炊きだきとか、そういう味付きで、そのまま食べられるやつじゃないと。うちの店でも、そういう好みのお客様が多いので、そうしています」

 前回の東京五輪が開催された年に「ちゃんこ番」を始め、来年で60年。その間、居酒屋店主として25年間、プロの料理人として、ちゃんこを振る舞ってきた。閉店に向けて、カブキは「あっというまでしたね…」と感慨を込めた。

 11月4日には東京・新宿FACEでイベント開催が決まった。これまで、同店の主催で2008年、14年、18年と同所でイベントを開催し、4回目となるが、今回は「閉店」を前に常連客やファンに感謝の気持ちを伝えるために行うことになる。詳細は今後、SNSなどで随時発表していくという。

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