宇宙飛行士の山崎直子氏 松本零士さんの言葉「この目で見た地球を描きたい」明かす お別れの会で弔辞

よろず~ニュース編集部 よろず~ニュース編集部
「お別れの言葉」を語りかけた山崎直子氏=東京国際フォーラム (C)松本零士/零時社
「お別れの言葉」を語りかけた山崎直子氏=東京国際フォーラム (C)松本零士/零時社

 2月13日に85歳で死去した漫画家、松本零士さんのお別れの会が3日、都内の東京国際フォーラムで2部構成にて開かれ、約3000人が参列した。

「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」「宇宙戦艦ヤマト」など、宇宙を舞台とした名作を次々に生み出した巨匠にふさわしく、お別れの会では宇宙をテーマとした祭壇が設けられた。松本作品から強い影響を受けた宇宙飛行士の山崎直子氏は「お別れの言葉」で感謝とともに、宇宙の素晴らしさを次世代に伝えていくことを約束した。

【山崎直子氏のお別れの言葉】

松本零士先生

先生は、今、星の海を旅されていらっしゃるのですね。遠くに旅立たれてしまった寂しさが募りますが、でも、空を見上げればそこにいらっしゃるような、叱咤激励して下さっているような気も致します。

先生の作品と出会っていなければ、今の私はいませんでした。物心がつき始めた頃に「宇宙戦艦ヤマト」に出会ったことは強烈な思い出で、一緒に観ていた兄と共に、広大な宇宙の舞台にワクワク、ハラハラしていました。「銀河鉄道999」では、様々な星を巡る旅を通じて、命の大切さを考えさせられました。鉄郎と一緒に、私も成長させていただいたような気がします。学校の帰り道、ランドセルを背負いながら、よくテーマ曲を口ずさんでいたものです。そして、ヤマトや999の機関室の緻密なメカの描写への憧れは、後に宇宙工学を学び、そのようなかっこいい宇宙船を造りたい、いつしか宇宙船に搭乗したい、という目標になっていきました。

ですから、宇宙飛行士に認定されて間も無くの頃、先生の紫綬褒章祝賀会で直接お会い出来た時は、天にも昇るような気持ちで、時の輪が接したかのようで感無量でした。

先生から影響を受けた人は、私ばかりではありません。今日も、毛利衛宇宙飛行士や野口聡一宇宙飛行士、そして、先生が長年理事長をつとめて下さった日本宇宙少年団の関係者、宇宙に関わる方々がたくさん来ておられますよ。日本だけでなく、世界中でどれだけの人が先生から影響を受けたか計り知れません。そんな中、未熟者の私が弔辞を述べさせて頂くことはとても恐縮ですが、感謝の気持ちをお伝えさせて下さい。

先生の生き様から、本当にたくさんのことを学びました。先生の作品は、時空を超えて、様々な人、想いが繋がっていきますが、それは先生ご自身が常に、自然や宇宙に畏敬の念を抱いていて、ご家族や周囲を感謝し、人と人の繋がりを大切にされてこられたからだと感じています。

先生はよく、「未来は今の子どもたちの心の中に既にある」と仰って、世界中の子ども達を励まし、信じ、愛情を注いで下さいましたね。私が宇宙に行く前年の2009年に、私の生まれ故郷で日本宇宙少年団の分団が結成された際には、公民館の一室でのアットホームな結成式に先生が自ら駆けつけて下さったことに、感動しました。一人一人の子ども達に向けられた先生の温かい眼差しを忘れません。私にも、「しっかり地球を見てきてくださいね」と仰って下さいました。

国際宇宙ステーションの中で、先生の作品の曲を聴きながら、青く輝く地球と向き合った時、先生の想いに少し近づけたような気がしました。宇宙から帰還後、ご報告に伺いたいとお伝えしたら、零時社さんに温かく迎えて下さり有難うございました。奥様、お嬢様へ向ける先生の優しくはにかんだような笑顔にも接し、私の父も九州男児でしたので、親近感を覚えました。

その後も、イベントで対談をさせて頂いたり、日本宇宙少年団の理事長を先生から畏れ多くも引き継がせて頂いたり、先生とのご縁に恵まれたことは幸せなことでした。先生とお会いすると、いつも少年のような瑞々しさで、片道切符でいいから火星に行きたいと仰っていましたね。この目で見た地球を描きたいとも。

もっと作品に想いを残して頂きたかったのに、もっと導いて頂きたかったのに、旅立たれてしまったことが、哀しくてなりません。でも、先生は今、火星よりもずっと遠くの星々を旅していらっしゃるのですよね。好奇心旺盛な先生のことですから、宇宙の彼方から、どう次の作品に繋げるか構想を考えられているような気がしてなりません。いつか、遠く時の輪の接するところで、またお会いできることを励みに、先生の夢を、更に次の世代に繋いでいけるよう、精進していきたいと思います。

松本零士先生、素敵な作品を、たくさんの励ましを、人生の道標を、本当にありがとうございました。星の海から、私たちを、未来をどうぞお見守りください。

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